透き通る ページ2
ずっと通っている美容院で、一目惚れした人がいる。
カランカラン
「こんばんは〜」
美容院特有の匂いがする。この匂いを嗅ぐとあの人を思い出す。
ほら、出迎えてくれる。
「いらっしゃいま…って。まーた来たんですか」
接客の笑顔からちょっとそっけなく変わるのが可愛くて、長い関係になれたんだな〜と嬉しくなってしまうと同時に
{透き通る}
相変わらずこの言葉がこんなに似合う声はない、と思った。
初めて会ったときの衝撃はすごかったな。色んな声を聴いてきたけど、この人ほど可能性を秘めている声はない。
本当に声優になってくれたらな。
そんなことを真剣に思いながらいつもの調子を保つ。
「今日も好きってことと声優になって?って言いに来た!」
「あほですか!声優にはなりません!」
「好きってことは触れないの?」
「からかうのもいい加減にしてください!で、今日は何色にするんですか」
あ、ちょっと照れてる。
「毎回はぐらかすよね」
「1年も言われ続けたら流石にはぐらかし方覚えますよ」
セット席に座ると、ちょっと待っててください。とパタパタと奥に行く。
そうなんだよな。出会ってから1年も経つんだよな…。
恋愛ってすごいよな。
普段一目惚れなんてしない自分が、恋愛なんてもう面倒だと思っていた自分が、今では彼女をひと目見たいがために1年もここに来ている。飽き性の俺にしたらとんでもないことだ。
なんなら好きになってから恋愛ソングを聴き漁って自分に酔っている部分もある。結構イタいな俺…。
「はあ…」
なんかしんどい。
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作者名:oguro.san | 作成日時:2019年10月21日 20時