-慕われ、好かれ。- ページ45
思ったとおり、中央手術室のそばの壁で、苦笑を浮かべる小柄な女性がいた。
幼さの残る顔には、疲れたという表情がありありと浮かんでいる。
────これだから、あいつは…。
「先ほどの手際の良さ、流石でした！」
「ありがとうございます」
「あの、今度食事でもどうですか」
「あ、はは…時間のない救命医なんて誘わなくても…」
二人とも大方新人、だろうか。
あいつも新人相手ならきっぱり断ればいいものを。
────場と相手をわきまえろ。
ふぅ、とひとつ息を吐いてから、つかつかと歩みを進めて彼女のそばに立つ。
「あ…」
なんでここに、と呆けた顔を横目に、目の前の二人に向かって言い放った。
「────あまり気安く関わるな。
思ったより機嫌が悪かったらしい、低い声が出た。
「こ…、藍沢先生、お疲れさまです」
「戻るぞ」
にこりと笑って俺に頭を下げるAの腕をとって、放心状態の彼らを無視して歩き出す。
律儀に会釈する彼女に何度目かのため息をついてから、俺は口を開いた。
「……素直に断れ」
「あははー、どうも苦手なんだよねぇ。
ありがと、助かりました」
アメリカ仕込みの断り術はどこへやら、こういった場面で彼女の性格は対応に困る。
コンサルに入ることに、なんの抵抗もないのだろう。
それだけ目の前の患者に向き合っている。
断りきれずに潰れかける(大抵は見かねた俺や白石が受け持つ)のが、彼女のフェロー時代からの癖だ。
「……まったく」
「ふっふっふ、外食羨ましいでしょ？
新人のナースちゃんたちにも誘われてるんだよ〜、可愛いよ〜」
論点がズレるのは、もはやいつものことである。
────こいつ、よくこの性格で海外にいれたな。
言動にいちいち目が離せない、それほどまでに危なっかしいと思う。
────…忙しくなりそうだ。
「あ、こうさかせんせー！」
「せんせ、あそんでー！」
前方からわらわらと駆け寄ってくるのは、確かあいつが懐かれている入院している子どもたちだ。
「あーっこら、香坂先生は忙しいんだから…！」
「ふふ、大丈夫ですよ、寧ろ癒しです」
「すみません、藍沢先生も…」
「いえ…」
きゃっきゃと騒ぐ子どもたちに膝を折って接している彼女の笑みは、とても優しい。
ふたりが医局に戻れるまで、あと5分────。
短編あとがきと、感謝。→←short story．-思い、思われ。-
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あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (
レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか？ (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか？ (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか？意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月1日 0時
