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(藍沢)
お前が頑固なのは、俺たちが一番よく知ってる。
自分の過去を滅多と語らず、いつもへらりと笑っているくせに、技術においては俺と同等────下手をすれば俺以上かもしれない。
医療界期待の星なんて期待されて、そんな重圧ものともしていないのかと思えば、裏ではあいつなりにプレッシャーと不安に押し潰されそうになっていたりする。
人には言わない。
ただ、あいつは嘘をつくのが下手だ。
いつしかその瞳を正面から覗き込んでやれば、大体のことは分かってしまうようになっていた。
だが今回は────相当厄介だった。
橘先生に聞こうにも、見当がつかないと言うし、実際にその症状を目の当たりにしたことがないため、病名を突き止めるのは無理だ。
下に降りると、家族待合で秋本さんの奥さんにAが付き添っていた。
静かに奥さんの背をさする彼女が、ほんの一瞬驚いた顔をする。
何か、言われたのだろうか。
それから彼女は、あの特有の泣き笑いの顔をして、奥さんに話しかけた。
何を言っているのか、ここからでは分からない。
そのときはどうしても、そこに足を進める勇気はなくて。
このことを後に後悔するなんて、誰がわかるのだろう────。
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(香坂)
「生きたくても生きれない人だって、沢山います。
私は…────その狭間にいます」
「…え?」
驚いたように顔を上げた奥さんを見つめて、私はふわりと微笑んだ。
「私の心臓は────」
いつ、止まってもおかしくないんです。
「そ、そんなご病気の身体で…あなたは…?」
「いまは薬で抑えているので、日常生活に支障はあまりないです。
…時々、痛みますけどね。
でも私は、この心臓が止まる最期の瞬間まで、医者であり続けたいんです」
それが私にできる、あなたたちへの唯一のつぐないだから。
そのときの私は、ちゃんと笑えていただろうか。
「ご主人の生きたいと思う気持ちを、支えてあげてください」
私は、いまを生きる。
それがたとえ、死への
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あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか? (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか? (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか?意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月1日 0時