5 ページ8
「────私は一人でもできます」
…ああ、そういうことか。
ぶつかった拍子に少しゆがんでしまった「坂」の字から続けて、Aを書いていく。
「私はちゃんとやれます。
冴島さんや…、香坂先生と同じくらいに」
「…そういうことは看護師長に言え」
そう言って私の手からタブレットを片手で取り上げると、それを雪村ちゃんに押しつける。
「ちょ、待って!
ごめんね雪村さん、字ちょっとゆがんでるけど!」
「あ…いえ」
荷物どこ持っていくかわかってるのか…。
無駄に筋肉のついた背中にぶつけた鼻筋を擦りながら、彼に追いつく。
「第2倉庫で良かったか」
「あ、うん。
薬品は初療室だからもらう」
すい、と箱に入った薬品を受け取って、私達は並んで歩き始めた。
「フェローには随分気に入られてるみたいじゃないか」
「後ろ振り返って笑うほど、雪村ちゃん、“面白い”子だったの?」
「それもあるが…」
いきなり目の前にずいっと大きな手が伸びてきて、歩みが止まる。
ぺちっ。
「〜〜〜っ」
「お前の赤鼻もだ」
誰のせいだ…!
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(白石)
「17歳で子どもか…悩むところだね」
「リスクが高いこともあるけどさ、これからの人生左右することだからね」
「ん…まぁ私は好きにやらせてあげればいいと思うんだけどねぇ…。
タイミング難しいけど」
「ほんっとそれ」
ずずっとうどんを啜ってから、悩ましげに唸るAに苦笑する。
ここのとこ毎日和食なところを見ると、よほど祖国の味が恋しかったようだ。
「はぁ〜〜…」
「なに藤川!」
あ、やっとため息止まった。
「藤川先生もお悩みみたいですよ」
「おお、聞いてくれるか、香坂…!」
「何でございましょ」
空になった器を横にずらし、Aは頬杖をつく。
って、食べるのはやっ。
「いや、実はさぁ……。
あいつも、妊娠してるみたいなんだ」
「あいつ?」
「って…冴島さん!?」
Aは瞬きをひとつ。
この子、こういう時は冷静だから、抜けてるのかしっかりしてるのかわからない。
ほんと、仕事してる時は別人が憑依してるんじゃないかといつも思ってしまう。
藤川先生は嬉しそうに眉を上げていた。
3276人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩架(プロフ) - 3話の「始め」ではなく「初め」ではないですか? (2018年10月13日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか? -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「,」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月27日 12時