コード・ブルー -Blue steelyard 2-

-7cm- ページ38

『俺が居なくなったこと、できれば誰にも知られずに、こっそり出ていきたくて。

………でも、白石がセッティングしてくれた飲み会今日だって聞いて、正直言うと大阪、行きたくなくなりました』



私が、誘ったから………？



誘わなかったら、今ごろこんな気持ちにならなくて良かった…？



「………みやこ、せん、せ…」

『白石先生、あなたのせいじゃないですよ。

間違っても自分を責めるようなこと、しないでください』



そこにいるのは京先生のはずなのに、関西弁じゃないだけで、うまく言葉が続かない。



やめてよ、動いてよ、私の喉。



「…向こうに行っても、俺達のこと忘れんなよ…！」

『はは、あったりまえやないか。

藤川こそ、俺直々の関西弁忘れるんやないで！』

「……あったり、まえやろ、アホ！！」



藤川先生の関西弁は、まだまだ京先生には及ばないけど、それなりに様になってる。



『冴島さん。

オペのときのサポート、ほんまおおきに。

フライトナースとして、これからもみんなを支えてやってくれ』

「もちろんです…！

京先生から教わったこと、無駄になんて、しません！」



『橘先生と三井先生は、この前ご挨拶したんで、ひと言だけ。

────末永ーく、お幸せに』

「ははっ、お前に言われるとは思ってなかったな」

「……ありがとう、京」




まだ言いたいこと、何も言ってない────。



『藍沢！

お前いつになったら香坂とくっつくんや！

首輪でもつけとかな、あいつ、簡単にほかの男に取られてまうぞ！』

「ば……、よく大声で言えるな」

『ほんまのことやろ』



あとは私だけなのに、身体が硬直したように動かない。



『あ、アナウンス…。

すんません。

短い時間やったけど、みんなの声聞けて良かったわ』



え…、もう、行っちゃうの…？



京くんが、遠くに行く。



もう、一生、逢えない────？






……いやだ。




いやだ、まだ、謝ってすらいない────！



弾かれたように腕をのばして、藍沢先生のスマホを掴む。



「────……っ、みやこくんっ！」

『………』




何も、聞こえなかった。




残り、7cm。

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