-8cm- ページ37
「……白石先生？」
うっすらと目に涙を浮かべた冴島さんが、私の方に駆け寄ってくる。
そのとき、頬にあたたかい何かが落ちた。
え……？
どうしていままで気づかなかったんだろう。
自分が、大粒の涙を流していることに。
「え…あ、やだ、なにこれ……っ」
止まってよ、お願いだから。
泣くな、泣くな、泣くな泣くな…！
京先生は、笑ってたじゃないか。
ほんとうは、一番つらかったのは彼なのに。
後ろで藍沢先生が、おもむろにスマホを取り出したのが見えた。
Aに、知らせるのかな。
「…………。
────────おいバカ、いまどこだ」
声が硬い。
ちがう、Aじゃない。
藍沢先生は、彼女にそんな冷たい言い方はしない。
ぞろぞろと、彼の周りにみんなが集まる。
スピーカーにして机の上に置かれたスマホの通話相手の名前に、呼吸が止まるかと思った。
京翔貴
『────はは、もうバレてもうたん？
俺の予想じゃ飛行機降りたら着信履歴の嵐やと思っててんけど…なんや、予想より早いなぁ』
聞こえてきた声は、昨日私が聞いた、飄々としているけどキレのある関西弁。
いつもと変わらない、京先生の声。
『いま成田空港やで。
……もうすぐ、搭乗の時間や』
言いたいことが山ほどあるのに、嗚咽が邪魔をして声がでない。
喉の奥に絡まって、呼吸を邪魔する。
苦しい。
くるしい。
胸が、いたい。
『……なんや、えっらい沈んでまんなぁ。
お通夜とちゃうねんから、そんな空気出さんといてや』
「…っ！
誰のせいだと思ってんのよこのバカタレ！！！」
緋山先生がスマホの前で、涙声で叫んだ。
『ははは、すまんな緋山。
…こっちで一人酒でも愉しむとするわ』
「一生……、かえってくんな、バカ」
目の下を赤くしながら、鼻をすする緋山先生。
女性の皆さん、あんまり泣くと明日のお顔が最悪になりまっせーと言ってくる京先生に、こんなときまでそんなに優しくしないで、と心の中で叫ぶ。
『あー…。
いままで黙ってたことは、悪いと思ってます。
けど俺自身、同僚に言っちゃうと仕事集中できないなって思って、心外の皆さんにも、翔北出る直前にお伝えしたんです。
できれば、救命の皆さんには、知られたくなかったです』
急に標準語に戻った彼は、まるで別人のように思えた。
残り、8cm。
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彩架(プロフ) - 3話の｢始め｣ではなく｢初め｣ではないですか？ (2018年10月13日 23時) (
レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか？ -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか？ (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「，」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです？ (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年7月27日 12時
