-15cm- ページ30
翌日の仕事終わり、小袋に分けた漬物を心外と脳外におすそ分けして回っていた俺は、両手に袋をさげて、救命の医局のドアから、ひょこりと中を覗いた。
ちょうど気づいた藤川先生が、ドアを開けてくれる。
「あーすんません、両手塞がってたんで助かったわ」
「おー!昨日は大動脈瘤の患者、サンキューな」
「いえいーえ。
コンサルならいつでも呼んでくれてかまへんよ」
中に入ると、全員が揃っていた。
カルテ処理をしていたのだろう。
「おっ、その袋の中身、もしかして…!」
「橘先生当たりです。
毎年こーれー、京家から漬物の差し入れでーす」
じゃーん、と袋を掲げてみせる。
「きゃー!今年もきたー!京マジ好き!」
「緋山先生が好きなのは、俺やなくて俺ん家の漬物やろ」
どーぞどーぞ、とそれぞれ先生に手渡していく。
ちょうど藍沢も来ていたので、ほい、と隣の白石にも渡してやる。
「あーなんていうか、これを貰って夏が来たなぁって感じるよなぁ」
「そーそー、もう6年目だよね」
藤川先生と緋山先生の言葉を背に、無意識に笑顔になる。
三井先生には、優輔くんの分も入れてるんで、あったかいご飯と食べてください、と言いながら渡すと、あの子も毎年楽しみにしてるのよ、ありがとねとお礼を言われる。
毎年思うけど、ほんま弟ができた気分やな。
「あー、炊きたてご飯欲しい」
「ふっふっふ…、聞いて驚け見て驚け。
炊きたてやないけど、救命の皆さんプラス藍沢には、おにぎりのサービスやで!」
「はぁっ!?
ケイあんたまじなんなの、前世は女子だったわけ?」
「いや知らんわ!」
緋山先生に思わず突っ込んだとき、周りからおぉ…という声が上がる。
え、なに、どないしたん?
「いやな……お前のツッコミを聞いたのも随分久しぶりだなぁと思ってな…」
「やっぱり関西人はキレが違いますよね」
「ですねぇ」
橘先生の言葉に冴島さん、白石先生が同意する。
そうか、関東人には関西人のノリは新鮮やって聞くけど、こんなツッコミ家でしかせぇへんしなぁ。
俺自体も素で話せるようになったんは、ここ3年くらいやし。
ほんま、時が経つのは早いよなぁ…。
残り、15cm。
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彩架(プロフ) - 3話の「始め」ではなく「初め」ではないですか? (2018年10月13日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか? -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「,」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月27日 12時