-19cm- ページ26
『いま何時だと思ってるの』
「え、午後9時」
『何言うてんねん、このドアホ!』
「お前相変らず関西弁ヘッタクソやな」
電話の向こうから聞こえてきた不機嫌2割増しの声に、はて、何かしたやろかと考えを巡らせる。
『私いまどこにいると思う?』
「ロスとちゃうんか?」
『オスロだよ!』
オスロ────あぁ、ノルウェーか。
向こうはいま、朝の4時くらいだろうと思い至って、俺は素直に謝罪した。
彼女は無理やり起こされることにおいては、救命の誰より機嫌が悪くなる。
「あー、すまんな、安眠妨害してもたか」
『お土産なしね』
「や、堪忍やで香坂先生」
彼女は数年前から海外を飛び回る同期、それこそリアル・フライトドクターである。
あいつはどこか抜けた雰囲気を漂わせているくせに、人のことはこれでもかってぐらい見ている侮れないやつだ。
どうしても、聞いておきたいことがあったのだ。
「………なぁ、白石俺のこと嫌いなんかな」
『え、なぁにそんなこと?
自分のことは自分が一番よくわかってると思うけどな、
あくび混じりの声に、どこか安心感を覚える。
「もうちょい、頑張ってみるわ」
『おーうその息。
「ムカつくくらい綺麗な発音をおおきに」
『いまじゃノルウェー語の勉強してるから、英語喋ったの久々だよ』
そこから他愛もない話を少しして、通話を切る。
帰国したらお詫びに何か奢ってやろうと考えながら、俺はスマホの電源を落とした。
────そんな昨日の彼女の言葉を思い出していたとき、心臓血管外科医局の電話が着信を告げた。
なんや、朝っぱらから要請かいな。
「心臓血管外科医局です、どうしました?」
『京先生、救命の白石です。
救命で先程運ばれてきた70代男性と80代女性、女性が
「
『5.8センチ』
おいおい、いままでよう生きとったなその患者。
胸部の腫瘤が5センチを超えると、いつ破裂してもおかしくない状態になる。
こりゃ緊急オペやな…。
「いまから向かう、出来るだけそっちで繋いどいてくれ」
『わかった』
残り、19cm。
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彩架(プロフ) - 3話の「始め」ではなく「初め」ではないですか? (2018年10月13日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか? -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「,」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月27日 12時