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「3年の夏休みが明けて、他クラスに休み続けている女子がいることを聞いた。

………お前だ」

「っ…ぜんぶ、知ってた、の…?」



彼女の友達が、話しているのを聞いた。



それは、11年前の高速道路の事故。

















────離れた場所に飛ばされた彼女がひとり、意識不明の女の子を心臓マッサージで救っていた間に、両親は息を引き取ったのだ、と。



髪と同じ、色素の薄い茶色の瞳が、玻璃水晶のようにひび割れて、一筋、涙が頬に流れ落ちた。



「A…」



その姿に耐えられなくなって、彼女の方へと手を伸ばす。



だがその細い身体は、バイクから降りると逃げるように俺から距離をとった。



「あ…、ごめ…」



それはAが自分の意思ではしたことではなく、ほぼ反射的に、無意識の行動だった。



「…そっか……あのとき、図書室で医学の本読んでたの、耕作だったんだ」



気づかなかったなぁ、私、人の顔と名前覚えるの苦手なんだよねと無理矢理笑う彼女は、これ以上聞くなと、俺との間に壁を作る。



────なぁ、どうしてそこまで背負い込む?

────やめて、もう聞かないで。



沈黙に耐えきれなくなって俯いたAは小さな、ほんとうに聞き取れるか聞き取れないかくらいの声で、告げた。



「私は……両親を見殺しにした。

私があのとき女の子じゃなくて、両親を探していれば、二人は助かったの」



それは、18歳の少女が初めて選択した、命の天秤。



どちらか一方しか救えないときに、目の前の命を優先した彼女の判断は正しい。



少なくとも、俺はそう思っている。



「────私ね、ロスに行って罵られてからずっと、思ってたことがあるの」



私は11年前のあの時から、医者になれる資格なんて、なかったんだなって。



「……だからせめて、両親のために最後まで“医者”でいさせてくれることを、許して?」



それは、ささやかな願い。



それは、つぐない。



あの日、帰ってきたときと何ら変わらない声音で言う彼女を、自分の服が涙で濡れるのもいとわずに、ただ黙って腕の中に閉じ込めた。



「……あったかい…」

「………言っただろ、無闇に男の前で泣くな」




────好きな女の涙は、綺麗すぎる。



その言葉を言う勇気は、いまの俺にはない。

Epilogue -痛みの先にあるもの-→←16



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作品ジャンル:恋愛
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彩架(プロフ) - 3話の「始め」ではなく「初め」ではないですか? (2018年10月13日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか? -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「,」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月27日 12時

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