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「Aに聞いたわよ、二人とも相当気に入られてんだってね。
────A先生、藍沢先生、なんで、脳外辞めちゃったの?」
「ふふふ、美帆ちゃん似てる」
三人でくすくすと笑いながら、私は藍沢先生に視線を向けた。
相変わらずの無表情で、何を考えているのかはわからない。
「まった〜、嬉しいくせに…。
そりゃ、A先生のほうが好きなんでしょうけどさぁ」
「────彼女は人生のすべてをピアノに捧げている。
俺たちが24時間、医療に費やしているのと同じように。
そして彼女には才能もある」
神様も贔屓だよねぇ……まあ、隣にも似たような天才もいるけど、彼女は元からの才能が始めから開花していた訳ではない。
努力の天才だから。
「ふーん…いーよねぇ才能もあって認められて、おまけにこんな可愛くてさぁ?」
「…美帆ちゃん、こっちみて言うのやめよ?」
でも、才能があるからと言って決してひけらかしたりはせず、寧ろ超がつくほどの謙遜をする。
素直に失態を認め、さらなる高みへと努力を惜しまない。
だから、彼女の周りには男女問わず人が集まる。
「────小脳に腫瘍がある」
居心地が悪そうにミュート・ピュトニィのグラスを指先で弄っていたAの肩が、ぴくりと跳ねた。
「手足の動きを司る様々な中枢が入り組んでいて、できれば触りたくない位置だ。
今日の検査で3.5センチを超えていた」
「……今は点滴で抑えているけど、いずれ……そう、遠くないうちに」
引き継ぐようにして言葉を発したAのグラスの中の氷が、静寂をやぶるように、からんと澄んだ音を立てた。
「…そうなんだ」
「……ごめん、ちょっと風あたってくるね。
久々にお酒入れたらびっくりして火照っちゃった」
いたたまれなくなったように、そう言って足早に外に出て行ったAの残した柔軟剤と蜂蜜の香りが、ぽっかりと空いた隣の席の空間に漂っていた。
と、それまで真剣な表情をしていた藍沢先生が立ち上がってこちらに歩み寄ってくると、彼女の肩からずり落ちて背もたれつきのスツールにかかっていたレザージャケットを取り、店の外へと出ていく。
一連の流れを見送ったあとで、私たち二人、そして恒夫は目を見合わせ────
「え、なに、
帰ったら盛大に祝福よ〜!と新しいお酒を用意したり、すかさずスマホを開いて気合い十二分な恒夫と緋山先生だった。
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彩架(プロフ) - 3話の「始め」ではなく「初め」ではないですか? (2018年10月13日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか? -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「,」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月27日 12時