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「ちょちょちょ!引っ張ったら裂けるって!」
「そのぎりぎりをやるんです。
止血かつ再度出血しないぎりぎりを」
藤川先生の制止をさらりと受け流し、自ら自分にとってリスクの高い治療を選択する。
「…本当に、変わってないなぁ」
「白石先生…」
無性に涙がこぼれそうになった。
「大丈夫だよ、横峯さん」
安定してきた患者のモニターの音が、その規則正しい音が、私の心を落ち着かせてくれる。
黒田先生のことで絶望の淵に立たされた私を庇ったのは、他でもない彼女だったのだから。
────白石先生に責任はありません。
私が中傷患者を優先しなければ、あの場にいたのは私でした。
状況判断ミスは私の責任です。
彼女を…いえ、彼らをこれ以上責めないでください。
お願いします。
さすがに期待の新人にそこまで言わせては、上も反論できなかったのだろう。
そこで話が終わったと思ったら、理事長からとんでもない言葉が告げられたのを、昨日の事のように覚えている。
────実は……香坂先生にはLAから本人指名で研修医としての要請があってね…本人の意思を尊重したいそうだが、雰囲気からして断るのは…。
────そう、ですか。
答えた声は、聴いたことがないくらい淡々と、それでいて涼やかだった。
その日の夜、私は細腕のなかで泣きじゃくった。
自分の失態と彼女の優しさに、そして何より大切な、私たちの大切な存在が遠くへ行ってしまうなんて────子どものように縋りついて泣いた私を、彼女は何も言わずに背中を優しく叩き続けていた。
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恵李 - こんにちは。恵李です。1年前からほとんど毎日見てます!続編よろしくお願いします!あの〜質問questionなんですけど、何歳ですか?私は華のJK16歳ですけど教えてください!! (2022年10月19日 22時) (レス) @page10 id: 18a46fedc8 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - ayanelさん» こんにちは… (2021年9月10日 11時) (レス) id: 9a04ef101c (このIDを非表示/違反報告)
レー - 質問というか聞いていいですか? (2021年3月8日 22時) (レス) id: 88b0f39677 (このIDを非表示/違反報告)
フラ - 作品を参考にしてよろしいですか?? (2020年9月11日 22時) (レス) id: ead1db5ef4 (このIDを非表示/違反報告)
あゆか(プロフ) - とても作品内容は面白く読ませて頂きました。一言申し上げるとセリフの前に名前を書いていただけると誰のセリフだか分かりやすくてもっと良い作品になると思います。素敵な小説ありがとうございました。 (2019年12月31日 0時) (レス) id: 8f8d498a5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月25日 21時