17 ページ34
「香坂先生が…あ、頭から血を流しながらそばにいて…!」
「…────放ってきたの?
そんな状況なら誰か呼んで?
香坂先生は簡易な応急手当ができる道具しか持ってないの!
何のためにシーバー持ってるの!」
思わず語調が荒くなりながら、私は立ち上がった。
「…あなたはこの女性を診てて。
バイタルの変化に気をつけて。
中の状況確認して、また指示出すから」
「はい…」
横峯さんから救命道具が入ったリュックを貰い、私は民家に急いだ。
到着してみれば、中には救急隊の方が、木材をどかそうと作業をしている所だった。
「A…、香坂先生!」
「白石せんせー、待ってました」
その隙間に入り、壁に凭れかかるようにして立ちながら処置を進める、Aの姿があった────。
「A…っ、どうしたのこの出血…!」
「あー、道路と熱烈なキッスを交わしかけた時にね、ざくっといっちゃって」
やーっと来てくれた…と、にへらっと笑い、彼女はすっと“医者”の顔つきになった。
「脈も弱ってきてる…瞳孔は対光反射が弱い。
持てる道具でできる限り処置はして、進行は遅らせてあるけど頭がやばい…サポート入る、お願い」
「…わかった」
リュックの中身からマスクやチューブを取り出すAを横目に、私は緋山先生に連絡を入れた。
「緋山先生、こっち来れる?」
『わかった、フェローに管理任してそっち行く』
「…私見た目ほど酷くないよ、大袈裟だなぁ」
「前科ある人が何言ってんの」
「……や、あの時はほんとヤバかった」
7年前を思い出したのか、ぶるっと身震いしている彼女にこれだけ話せれば大丈夫か、と結論づけて、処置に入った。
「おまたせ……ってA、いないと思ってたらこんなとこいたのね」
「あはは、連絡取れなくてごめんね」
「その頭の傷は後でみっちり塞いだげるわ」
木材の上に登った私は、この体制はAには厳しいということに気がついた。
だから彼女はあえて頭を触らなかったのだろう、その判断は正しい。
「…上からアプローチするしかない」
「わかった、ふたりでサポートする」
狭い空間での処置が始まった。
どくん。
心臓のあたりがひどく冷えたのに、気づかないふりをして。
4156人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恵李 - こんにちは。恵李です。1年前からほとんど毎日見てます!続編よろしくお願いします!あの〜質問questionなんですけど、何歳ですか?私は華のJK16歳ですけど教えてください!! (2022年10月19日 22時) (レス) @page10 id: 18a46fedc8 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - ayanelさん» こんにちは… (2021年9月10日 11時) (レス) id: 9a04ef101c (このIDを非表示/違反報告)
レー - 質問というか聞いていいですか? (2021年3月8日 22時) (レス) id: 88b0f39677 (このIDを非表示/違反報告)
フラ - 作品を参考にしてよろしいですか?? (2020年9月11日 22時) (レス) id: ead1db5ef4 (このIDを非表示/違反報告)
あゆか(プロフ) - とても作品内容は面白く読ませて頂きました。一言申し上げるとセリフの前に名前を書いていただけると誰のセリフだか分かりやすくてもっと良い作品になると思います。素敵な小説ありがとうございました。 (2019年12月31日 0時) (レス) id: 8f8d498a5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月25日 21時