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(香坂)
「よし…小さい傷はこれだけか…」
ウエストポーチに入っている道具だけで可能な治療をすべて終わらせたところで息をつく。
血の滴る髪を鬱陶しげに払い、私は顔をしかめた。
目の前には、民家と山車の間に挟まった、7歳くらいの男の子。
一番やばいのはこの頭なんだけど…下手に動かして悪化したらまずい。
ペンライトで瞳孔を確認しながら、深呼吸をひとつ。
前頭部の傷口から流れ出た出血が、じわじわと、だが確実に身体を蝕んでいるのがわかる。
先ほど救急隊員がひどく慌てた様子で先生を呼んできますと出ていったが、フェローを連れてこられてもちょっと困るなぁと目にかかる血液を拭ったとき、こちらです!という声が聞こえた。
「え…」
「……ぁー、横峯さん。
悪いんだけど白石先生に来てくれるよう連絡いれて…」
何でこう、私の予感はつい当たってしまうんだろう。
返事がないのに混乱してるなと思いつつ、再度口を開く。
「────横峯さん、聞いてる?
白石先生を…」
そこまで言ったところで、彼女はばっと身を翻してしまった。
シーバーの存在をすっかり忘れているようだ。
行ってしまった彼女にそっとため息をつきつつ、頭の具合を探ろうと再び目の前の男の子に手を伸ばした。
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(白石)
「白石先生!!」
「どうしたの?」
悲鳴のような声をあげて駆け寄ってきた横峯さんに、治療の手を止めずに聞き返す。
「…中の…っ、山車と家の間に…」
────中?
「ちゃんと言って?」
こんな時にAはほんと、どこ行ったのよ…。
「────挟まってるんです…!子どもが…っ」
子ども…?
もしかして…さっき訴えかけてたのは────。
「お子さんがいるんですか?
もしそうなら、私の手を握ってください」
女性に呼びかけてみれば、確かにきつく手を握られた。
やっぱり…なんでもっと早く気づけなかったんだ。
「その子はどこ?」
「中です…家の中」
「いま誰が見てるの?」
「あの…っ、香坂先生が…あ、頭から血を流しながらそばにいて…!」
────いま、なんて。
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恵李 - こんにちは。恵李です。1年前からほとんど毎日見てます!続編よろしくお願いします!あの〜質問questionなんですけど、何歳ですか?私は華のJK16歳ですけど教えてください!! (2022年10月19日 22時) (レス) @page10 id: 18a46fedc8 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - ayanelさん» こんにちは… (2021年9月10日 11時) (レス) id: 9a04ef101c (このIDを非表示/違反報告)
レー - 質問というか聞いていいですか? (2021年3月8日 22時) (レス) id: 88b0f39677 (このIDを非表示/違反報告)
フラ - 作品を参考にしてよろしいですか?? (2020年9月11日 22時) (レス) id: ead1db5ef4 (このIDを非表示/違反報告)
あゆか(プロフ) - とても作品内容は面白く読ませて頂きました。一言申し上げるとセリフの前に名前を書いていただけると誰のセリフだか分かりやすくてもっと良い作品になると思います。素敵な小説ありがとうございました。 (2019年12月31日 0時) (レス) id: 8f8d498a5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月25日 21時