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────コンコンコン
「失礼します。
すみません、お待たせしてしまって」
カルテの処理をしていたら遅くなってしまった。
「おう香坂、お疲れさん。
取り敢えず座ってくれ」
「はい」
耕作と新海先生が並んで座っていたので、向かいの誰もいないソファの端に、ちょこんと腰かける。
「で、だ。
二人には今話したとこだが、香坂、改めて聞く。
推薦の件、お前はあくまでも最終候補でいいのか」
「はい。
昨日もお話したとおり、私はあくまでふたりのサポートが主な任務だと思っています。
それに、先生方の計らいで十二分に海外では経験を積ませて頂きましたから…。
以後はこの経験を生かし、翔北にしばらく貢献していきたいと考えています」
本心でさらりと述べると、後ろからかなり威圧感のある視線が背中に刺さったが、あえて気に止めない。
────私が行く時はあんなに心配そうな顔してたのに、今じゃ逆だな。
「………わかった。
藍沢、新海。
香坂の言うとおり、お前らを優先して候補を決める、いいな?」
苦い決断を下すような顔をして二人を見た西条先生に、少し申し訳ない気持ちになってしまう。
でもこれは、二人の力を伸ばす絶好のチャンスだ。
と、ヘリのプロペラ音がしたと思ったら、西条先生の後ろにある窓に、飛び立っていくドクターヘリが見えた。
今日これで何回目だっけ?
「午前中だけで4フライトか。
今日は多いな…こりゃまたこっちに押し付けてくるぞぅ」
「救命は受け入れるだけ受け入れて、捌ききれてないですもんね」
確かに、患者1人を医者1人でまわせるなら有難いことこの上ないのだが、さすがにそれはどんなに腕が優れていても無理に近い。
(………まぁ、向こうは例外だけどね)
「…トロント大の話、してもらってもいいですか」
耕作が話を戻す。
「行くのは年明けだから、秋には決めたい」
────pipipi,pipipi,pipipi
「ほぉら来たぞ」
「すみません。…はい、藍沢です」
…救命、相当やばいな。
今日の大きい手術は午前中だけだったし、これは私も出た方がいいかな。
「西条先生、すみません。
私もコンサル行ってきます。
フェローがいるにしても、最初は回りませんから」
「お前は相変わらず優しいな、香坂」
「何なら脳外の新人鍛え抜きましょうか?」
耕作に続いてドアを出る直前、西条先生の笑顔が引きつったのは見なかったことにしよう。
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恵李 - こんにちは。恵李です。1年前からほとんど毎日見てます!続編よろしくお願いします!あの〜質問questionなんですけど、何歳ですか?私は華のJK16歳ですけど教えてください!! (2022年10月19日 22時) (レス) @page10 id: 18a46fedc8 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - ayanelさん» こんにちは… (2021年9月10日 11時) (レス) id: 9a04ef101c (このIDを非表示/違反報告)
レー - 質問というか聞いていいですか? (2021年3月8日 22時) (レス) id: 88b0f39677 (このIDを非表示/違反報告)
フラ - 作品を参考にしてよろしいですか?? (2020年9月11日 22時) (レス) id: ead1db5ef4 (このIDを非表示/違反報告)
あゆか(プロフ) - とても作品内容は面白く読ませて頂きました。一言申し上げるとセリフの前に名前を書いていただけると誰のセリフだか分かりやすくてもっと良い作品になると思います。素敵な小説ありがとうございました。 (2019年12月31日 0時) (レス) id: 8f8d498a5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月25日 21時