FF15短編集【男主】 (ページ3)

今日:5 hit、昨日:12 hit、合計:3,158 hit

プロンプト（キャンプにて）ページ3

幼いころから夢をあまり見ない体質だった。でももしも見たとしたら、自分にとっての痛みになる。近頃夜が長くなったせいもあり、キャンプで過ごす時間が多く特に疲れもないがすることもない俺は適当にテントの中をごろつきそのうち眠るという生活を続けていた。

しかし突然訪れた夢に俺は目を覚まし、今キャンプの焚火にあたりながら膝を抱えて座っている。普段なら落ち着くはずのその火も今は落ち着かせる効力もなく、ただひりつく様な熱を発しているのみだった。

「あーもう体いたーい」

ガサゴソと聞こえてきたと思えば、テントから腰をさすりながらプロンプトが出てきていた。

「あれ、A？どしたの？」

どうやらこちらに気づいたらしい彼はもったりとした足取りでこちらに来ると隣にとさりと座る。

「暖かい…」

ふ、とため息をついて笑みを浮かべながら焚火を見つめると彼はぽそりとつぶやいた。

その横顔を眺めているとぱちりと視線が合い互いに暫く見つめ合っていたのだが、先に視線をそらしたのはプロンプトだった。

「あー…なんかあった？ほら、前にも怖い夢見たって言ってたじゃん…またそれとか？」

前に見たのは、ルシスを出てすぐの事だった。国が亡ぶその映像は自らも体験しているかのように感じられるほど鮮明で、崩壊していく音も匂いも転んだ子供を起こす時の感触さえも生々しい。その夢を見た数日後本当にルシスは滅んでしまった…。

初めて夢を見たとき、俺はまだ5歳くらいだった。その時はただ自分が転んで痛い思いをするというものだった。そのあとも夢を見ることはあったが、大体はその程度だったのに、久々に見たと思ったら国が亡ぶ夢だなんて、俺はその時も飛び起き、こうして焚火にあたっていたのだが、その時もプロンプトに慰められていた。決して夢の内容は話さなかったのだが、もしもあの時言っていたら少しは違う未来があったのではないかと、思い出しては胸が苦しくなる。

いつの間にか体に温かさを感じ、横を見ると彼がぴたりと俺にくっついて膝を抱えながらこちらを覗き込んでいる。

言えよ、というように肘で軽く小突いてくる。

この時、もしも彼にノクトが死んでしまうかもしれないと伝えていたら、未来は変わっただろうか。

口にすれば現実に一歩近づいてしまうのではないかと、思った俺の口からは何も発せられることはなく、ただ大切な友の死の暗示に涙があふれたのだった。