FF15短編集【男主】 (ページ11)

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イグニス３ページ11

ハンマーヘッドは様変わりしてしまっていた。

ここにはよくみんなで立ち寄り、車の整備や魔物討伐の依頼、食材調達、シドの改造など様々な事を行ってきた思い出の多い場所で。

しかし今はどうだろう。大きく掲げられる看板はあるもののそれ以外はまるっきり変わっているようだった。

車の整備をしている場所は閉鎖されているし、剣や槍が立てかけられて並べられている。

俺は連れてきてくれた男に礼を言うと、光がともされている店に向かった。そこではよく依頼を受けてついでに飯も食べた場所。そっと中をのぞくとそこはすでに飲食店などではなく、何が入っているのかわからない木箱が山積みにされ所狭しと置かれている。

その周辺には武装した人物たちが窓の席に座り何かを話し込んでいるようだった。

「そこで何をしているんだ？」

こちらにはどうも気づいていないようだが、その中に見知った顔はなく、ほかの場所も探してみようと思った矢先だった。背後から声を掛けられ驚いて振り向く。

後ろに立っていたのは前髪を後ろに流し、目にはサングラスをかけている長身の男だった。口元や目元には傷が見える。それはだいぶ前についたかのように血やかさぶたなどは見受けられない。

傷などはあるものの、顔の特徴から自分のよく知る人物だとようやく気が付いたころには、目の前の男は小首をかしげていた。

…イグニス？

目に入ってきた情報に戸惑いながらもその人物の名前を呼ぶと、わずかに目の前の人物が驚いたようなしぐさをした。

「……A…か？」

そうだよ、と頷いていると、スッとほほを包むように手を添えられ、頬から目元、鼻、口、顎を順番に触ってくる。

なに？と尋ねると彼はハッとしたように手を引っ込め、そしてゆっくりと近づいてくるとふわりと抱きしめられた。

「よかった……生きていてくれて…」

突然の事で頭が混乱し、何も言い返せずにいると一瞬腕に力がこもりそして解放される。

「グラディオたちにも知らせないと」

そういうと嬉しそうに笑みを浮かべてどこかへ向かおうとするのを俺はその腕をつかみ引き止めた。

「……どうした？」

グラディオたちにももちろん会いたい。でも今はできるだけ人とは接触したくないがそれをどう伝えていいのかわからず俺はとりあえず気になったことを口にした。

「これ、か？」

顔の傷の事について尋ねると、彼は目元の傷をなでるように触ると、ふと笑ったのだった。