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"宇宙に行く"という夢を持つ科学少年─石神千空はわたくしの幼馴染。
口も態度も悪いけど、情に厚い彼を好きになったのはいつのことだろう。
今日も石神家で妙な実験を繰り返す千空を余所に、わたくしは黙々と読書を続ける。
私は理系はさっぱりだからお手伝い出来ることはないし、千空も手伝えとは言わない。
お互い別々のことをしているのにいつも一緒の空間にいるのはおかしいかもしれないが、お互い同じ場所にいたかったのだろう。
「それ、今何読んでんだ？」
「ガリア戦記の原文」
「何語だ？」
「ラテン語」
"読む？"と尋ねると千空は首を振った。
「秋霖に似てきたな」
「"愛しの妻によく似たお姫様"って言われるんだけど」
「中身の話だ。秋霖に似て語学力はチートだな」
「それは1000くらい理解出来た時に聞きたいわ」
世界には約7000もの言語が存在する。
何十ヶ国語も話せる人でも、世界中の言語の中のひと握りしか理解出来ない。
「神様も塔を建てたくらいでお怒りにならなくて良かったのに」
わたくしがぼやくと、千空は眉を寄せて首を傾げた。
確かに科学オタクの知識の範囲外ではある。
「ノアの大洪水の後、人々が天に達するほどの塔を建てようとしたのを神がお怒りになって、一つしかなかった言葉を混乱させて通じないようにしたの。だから人々は塔を建てるのをやめて各地へ散ることになったのよ。旧約聖書のお話ね」
嗚呼、本当に残念。
「言葉を知るのは楽しいけど、わたくしは一生かかっても世界の全てを手に入れられないのよ」
言葉にしてしまうと虚しくて、本を放り出すと千空のベッドに寝転がる。
ギシッ、と音がしてベッドが動いた。
背を向けていて見えないけど、千空が腰掛けたのだろう。
「…お姫様は地球だけで根を上げるのか？」
髪を撫でながら紡がれる言葉に寝返りをうつ。
仰向けになったわたくしを千空が見つめていた。
「俺と一緒に宇宙に行くんだろ？宇宙人とっ捕まえて地球外語も習得すんだろ？」
だったらもうちっと頑張りやがれ、と笑う千空。
嗚呼、相変わらずわたくしの扱いが上手い。
小さい子でも宥めるかのように優しい顔をして撫でてくれるものだから、わたくしはいつものようにこの手に甘えることにした。
とっても優しい科学者様の手を離したくはないけど、この手はいつかわたくし以外の誰かの頭を撫でるのだろうか。
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御影ゆき(プロフ) - わたぁめ ?さん» コミュ障なので万年語彙力は瀕死ですが、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますね！ (2021年3月30日 7時) (
レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
わたぁめ ?(プロフ) - 凄い … 語彙力が凄い … 応援してます ！ 頑張って下さい ！ (2021年3月29日 16時) (レス) id: 3d31fada56 (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - ありがとうございます!SSも読ませてもらいますね! (2020年6月27日 12時) (レス) id: 3ab5c4a85e (このIDを非表示/違反報告)
御影ゆき(プロフ) - 真白さん» TwitterにもSS挙げてるので良かったらご覧下さいませ。アドバイスは出来ないかもしれませんが、真白さんの小説も読ませていただきます♪ (2020年6月27日 12時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
御影ゆき(プロフ) - 真白さん» コメントありがとうございます。電子で漫画読みながら、ちょこちょこ書いてるだけで決して上手くはないですよー。オンラインを知らないのもあってアドバイスはあまり出来ないかと…。 (2020年6月27日 12時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：御影ゆき | 作成日時：2020年5月23日 20時
