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…理屈じゃ、ない。
『教えてよ。どこが、好きなの』
甘さを含んだ苦しげな深澤の声が、言葉が、忘れられない。
『……理屈じゃねぇよ』
理屈じゃない。
あの時、深澤もそう言った。
私は、宮舘君の優しいところが好きだ。
爽やかな笑顔も雰囲気も、ああやって私の告白に真面目に向き合ってくれるところも。
でも、じゃあ。
深澤と岩本君の言葉が本当なら、これは好きじゃないって事?
…だって、分かんないけど。
理由なんて分かんないけど、私は。
深澤の声もあの時の態度もたまの優しさも、匂いも体の厚みも重さも、全部、頭から離れない。
理屈じゃ、ない。
好きなところはと聞かれて答えられる自信なんてないけど、女の子相手に鼻を伸ばす深澤が、私以外に可愛いと言っている深澤が、私の事なんて頭にない深澤が、たまらなく嫌だ。
「ふっか」
「…んー」
「俺先帰るわ」
岩本君の言葉に焦ったように「なんでだよ」と言う深澤と、今だって目が合わないんだから、また。
胸の違和感が大きくなって、それが苦しさに変わる。
「変な事考えてんだったら、余計なお世話だっつの」
岩本君が、ため息が聞こえてきそうな顔でコメカミを摩る。
…なによ、それ。
そんなに私と話すのが嫌なの?
だったら、…だったら初めから、あんな事しないでよ。
まるで私の事が好きみたいに触れたあの時、深澤のものになりたいって、思ってしまった。
「…帰る、」
…私は、深澤が好きだ。
二人の顔も見ずに教室を飛び出す。
「待ってAちゃん」という岩本君の声も無視して。
まさか、私がって。
自覚なんかしたくなくて。
いつからとか、どうしてとか、そんなの分かんない。
だけどもう、気付かないフリなんて出来ないよ。
…だって、私、傷付いてる。
あの時からずっと、本当は。
深澤に想い人がいるなんて、全然知らなかった。
知りたくなかった。
…宮舘君から告白されたって言うのに何も言えなかった。
何をしても考えてしまうのは、深澤だった。
私は、深澤が好きだ。
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バンビ(プロフ) - 葉月さん» 葉月様、コメントありがとうございます。これからも楽しんで頂けるように頑張ります。これからもよろしくお願いします。 (2022年4月22日 16時) (レス) id: 0059ecb2b1 (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 本当に話一つ一つ大好きです。これからも応援しています!無理になさらないように自分のペースで頑張ってください♡ (2022年4月22日 15時) (レス) @page49 id: e15b346611 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2021年12月4日 22時