ハーバード・クーラー

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「Aちゃーん」









ちょいちょいと手招きをする岩本君の姿に、デジャブ？と思うが教室を出て行くクラスメイト達が視界に入り、今が放課後だということに気付く。










「ちょっと、最近ボーッとし過ぎじゃない？」









目を細めて笑う顔が可愛いな、なんて思いながらあんまり話さない岩本君にも分かっちゃうんだって、また落ち込む。










「…そうかな、どうしたの？」










「どうしたのじゃないよ。ふっか、どうしてくれんの」









「…というと、」










「最近何言っても上の空だし、付き合いわりーし」









「私に言われても…」









「まぁ何があったか知らないけどさぁ」









ドキッとして固まる私に「いや、なんとなく分かるけど」と呆れたように言って、グイッと顔を近付ける。










「Aちゃんはどー思ってんの」










「どうって、私は別に…」












思わず後ずさりしそうになる私に岩本君は、はぁ、とため息をついて項垂れる。












「でも、どこが付き合い悪いの？こないだだって…」













−−−−−−











『ふっかも行くよねー？カラオケ』










『おー行く行く』









『やった！あれ歌ってよ！』









『えー？しょうがねぇな』










…とか、









『昨日はご飯代立て替えてくれてありがとう』










『あーいいよいいよ、レディはお財布なんて出さなくていーの』









『あははは、もう〜レディって！』










…とか。…あ、あと今朝も、











『あれ、髪色変えた？』












『そうなの！よく気付いたね、どお？』










『いーじゃん、可愛い』











って鼻の下伸ばしてたな。











…あぁ、なんか。思い出したらムカついてきた。













ーーーーーー











「Aちゃん、顔！」











あはは、と笑って「ていうか、最後の関係ないじゃん」と近付けた顔を戻す。









「なーに、そんなにふっかの事見てたの？」










「ち、ちがっ」










「ふはっ。付き合い悪いって、前に比べたらって意味ね、全部が全部断られるわけじゃないけどさ。でもなんか話しかけても、んー、とかあぁ、とか返事が適当なんだもん」











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