君の世界を探して歩こう ページ47
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「ねぇ、ママー?美結、パパとけっこんしたーい」
「えー?パパはママと結婚してるからダメよ〜」
「えぇ〜!ママだけズルい〜!美結もパパとけっこんしたーい!!」
「さっきからママと何話してるの、美結ちゃん」
「あ、パパー!おかえりなさーい!」
「おかえりなさい、拳くん」
「ただいま、美結ちゃん。Aちゃん」
時は流れ、数年後───
めでたく拳くんと結婚し、娘にも恵まれ今新たな命を身体に宿しているところだ。
美結はパパの拳くんそっくりで頭も良くて自慢の娘だ。幼稚園でも人気者のお転婆娘。
「ママがねー、パパとけっこんしてるから美結がパパとけっこんできないのー」
「う〜ん、それは困ったなぁ。でも、パパはママと結婚して良かったけどなぁ。こ〜んなに可愛い美結が生まれてきてくれたからね〜!」
「きゃーっ!パパ、たかいたかーい!!あははっ」
「それそれ〜っ」
優しい夫と可愛い娘に囲まれた、暖かい家庭。一時は絶望して、捨てようか悩んだ人生だったけど、未来はこんなにも明るい。
まるで幸せの象徴のような家庭を築けていることに時折幸せすぎて怖いくらいだった。
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「美結、寝た?」
「うん、ママとパパと3人で結婚するって言って寝ていったよ」
「3人で結婚かぁ。俺は嬉しいけど、美結とAちゃんが俺を取り合って喧嘩しそう」
「ちょっと何言ってんの」
お風呂上がりの拳くんに水を渡して、ソファに腰掛ける。隣に拳くんも腰掛けて、いつものようにお腹の子との会話タイムが始まる。
「ただいま〜、パパが帰ってきたよ〜」
「…今は寝てるのかも。あんまり動いてないよ」
「えぇ〜またかぁ」
だが、いつも拳くんが話し掛けるとピタリと動きが止まってしまうのだ。いつもと違う声を聞いて戸惑っているのだろうか
「……この子はどんな世界を歩いていくのかなぁ」
「きっと楽しくて幸せな人生を見つけて歩いてくれるよ」
「色んな幸せに触れて、暖かくて優しい人生を送って欲しいね」
「……そうだね」
拳くんの優しくてしっかりした手のひらが私の手のひらと重なった。
いつも、この優しい手が私を守ってくれた。離れてしまった時もあったけど、諦めず私を探して歩き続けていてくれた。
これからは、ずっと隣で歩いていける。
どんな世界が待っているのかなぁ、楽しい世界だといいなぁ。
ううん、きっと拳くんと一緒ならどんな事でも楽しくなるはず。
今度は私が、
君の世界を探して歩こう / [完]
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時