探していたものはすぐ近くに ページ43
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そっか…約束……
私、約束したんだ…ずっと、拳くんのそばにいるよって……
『お疲れ様!惜しかったね』
『Aちゃん…全然ダメダメだったや。かっこ悪いところ見せちゃったね』
『そうかなー?かっこ良かったよ!』
高校生クイズが終わったあの日、拳くんと約束したんだ
『少なくとも、私の目に映る拳くんはいつだってかっこいいよ』
『あはは、何それ〜』
『あ、やっと笑った!どんな拳くんも好きだけど、笑顔の拳くんが一番好き!』
『っ……』
『ずっと、ずっと…拳くんが笑っていられるように。私がそばにいるからね。いつだって、拳くんの味方だからね』
約束…したんだ!
拳くん……っ
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「……A、A!!」
「お母さん……私……」
母親に名前を呼ばれ目を開けると、私の顔を心配そうに覗き込んでいる。母親の手がそっと私の頬を包んで優しく撫で、親指で涙を拭ってくれた。
「大切な約束だったのに……」
「え?」
記憶が無いとはいえ…あんなに酷いこと言って…それなのに、拳くんは何も責めないで、全て受け入れてくれて……
「…どうしたの?涙流して……」
「私、思い出したの。約束…拳くんとかわした約束…それなのに、私全部忘れちゃってた…」
ずっとそばに居るって言ったのに、私から離れて突き放して…拳くんを傷付けた。それでも、拳くんは大きくて優しい愛情で私を守ってくれてたんだ。
「あの日から私は違う道、違う人生を歩んできたけど。これからは、拳くんと一緒の世界を歩いていっても良いのかなぁ…?」
「それは…お母さんじゃなくて、拳くんに聞きなさいな」
母親や父親から貰う愛情とはまた別の形の、優しくて大きくて暖かい愛情。私はずっと拳くんから貰っていたんだ。今度は私が拳くんに与える側に回れるかな
「Aちゃんが、あの日のことも約束も覚えていなくても。俺はずっとAちゃんを覚えているし、君の世界を探してこれからも歩き続けるよ。だって約束したんだ、ずっと一緒に居るって、ね?」
「拳…くん!」
声のする方へ顔を上げれば、少し開いた扉から拳くんの姿が見えた。
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時