あのね、僕は忘れない ページ34
.
「失くした記憶を取り戻す方法って…ありますか?」
「記憶を取り戻す方法?」
「はい……」
無いって言われればそれまでだ。地道に思い出せるように色々試してみなければいけない。もしも、あるのなら…医学的に聞いてみたかった。
「うーん、無い。…とも言い切れないかな。記憶喪失になった原因によって色々治療方法も変わるけど、それらを試したところで絶対記憶が戻ってくるという保証もない。だから、曖昧だけどあるとも無いとも言えるかな…」
「……そう、ですか。…そうですよね」
「ごめんね、全然役に立てなくて」
「いえいえ!こっちが変な事聞いてしまったんですし、お話聞いて頂けだだけで…」
やっぱり、無いよねぇ…
さて、どうしたもんか…キーになりそうな拳くんに会っても何も思い出せなかったし……
「それにしても福良さんも、Aさんも失われた記憶を取り戻す方法を聞いてくるなんて…」
「え…拳くんも?」
「ん?あぁ、そうなんだよ。だいぶ前だけどね、失くした記憶を取り戻す方法ってあるのかって。いまのAさんみたいに聞いてきたんだ」
「そうなんですか……」
…拳くんも、記憶を取り戻す方法を探っていたなんて…もしかして、私の…?でも、なんで……
「適当なこと言うのも出来ないしさ、今みたいに絶対あるともないとも言えないって言ったら、そこでもAさんと同じように少し残念そうな顔してたなぁ……あ、気を悪くしたらごめんね」
「あ、いえいえ!ただ、ちょっと…意外だなぁって思っただけで…」
「意外?」
「拳くんが、そんな事を三守さんに聞いていたなんて…と思って」
「……僕には福良さんもAさんもどんな記憶を取り戻したいか、なんて分からないけど。少なくとも福良さんの方は自分ってより大切な誰かの記憶を取り戻したい、みたいな話をしてた気がするよ」
「大切な…誰か…」
「まぁ、Aさんからも同じ質問されたからきっとその誰かってのは、Aさんの事だったんだろうなぁって。ほら、福良さんとは幼馴染なんでしょ?」
「え、えぇ。そうですね」
「どんな記憶であろうと、取り戻したいって思うってことはそれだけ相手のことを大事に思ってる。記憶を大切にしてるってことだと思うよ」
───…僕はどんな事があっても、Aちゃんのことを覚えているよ
「うっ……」
「え、Aさん?大丈夫?!」
良くなったはずだったのに、昔の記憶と共に頭痛が私に再び襲いかかってきた。
.
215人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時