口を開けば空回り ページ32
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1ヶ月ほどのお休みを頂いて、久しぶりのオフィス。拳くんや彩加には、退院した時にお礼の電話をいれてから、久しぶりに会う。拳くんに会うのも、皆に会うのも少し緊張するなぁ
迷惑を掛けたお詫びとして、手土産を持ってオフィスに足を踏み入れると……
「あ…Aちゃん!おかえりなさい!!」
「ただいま、彩加。迷惑掛けてごめんね」
「全然そんなこと思ってないよ〜、もう体調大丈夫なの?元気?」
「大丈夫だし、元気になったからこうして来たんだよ〜」
第一声に彩加の大きな声と、優しい抱擁に迎えられた。
「無理しなくても大丈夫だからね?Aちゃんが居ないと寂しいし大変だけど、全力でみんなでカバーするから!」
「…ありがとう。あ、伊沢さん。長いお休みを頂いてすみません。これ、お詫びの…」
「おかえり!Aちゃん!別にそんな菓子折りなんて、いいのに。元気なAちゃん見られただけで十分だよ」
「…はい、ありがとうございます」
彩加に伊沢さん。私がいない間いっぱい迷惑をかけてしまっただろうに文句のひとつも言ってこない…年齢は私より下なのになんて立派なんだろう…彼らの優しさに思わず涙が出そうになる。
会う人会う人、みんなから「体調もう大丈夫なの?」「おかえり、待ってたよ」と優しい声を掛けてくれる。本当に、ここの人達はみんな暖かくて優しい人ばかりだ。一人一人に声を掛けて行くと、私が休んでいた1ヶ月の間でここを去ってしまった人物もいたようだった。
「あ…拳くん…」
「Aちゃん、おかえり。もう、大丈夫なの?」
「うん。拳くんには、倒れた時から入院中まで…その、色々迷惑も掛けちゃったし、酷い事も言っちゃって…本当にごめんなさい」
「謝らなくていいよ。伊沢も言ってたけどこうして元気になったAちゃんに会えただけで万々歳だよ」
…少し、いつもと違う笑顔が気になったけどどうしたの?なんて、聞けなかった。
「あ、そうだ。恵比寿さんは?」
「あぁ、恵比寿さんなんだけど…QuizKnock辞めちゃったんだ…昨日突然……」
「え……?」
「特に何も挨拶もなく、本当に突然辞めちゃったから…多分俺が仕事押し付けすぎちゃって嫌になっちゃったのかも…」
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時