検索窓
今日:19 hit、昨日:6 hit、合計:79,489 hit

もう元には戻れないよ ページ29

.


暗い…空気が重い……
体が思うように動かせない……

いつもの夢とは違って、暗くて寒くて、怖かった。どんな夢を見るのか…怖くて怖くてたまらなかった。



───…やだっ!離して……!
───痛い…!怖いよ……!
───誰か…拳くん……助けて…



この夢は……っ
後ろ姿と声しか分からないけど、夢に出てきて助けを求めているのは…私だった。

なんて、酷い…なんて、惨い……
夢なのに吐き気と頭痛に襲われているような感覚になる。



───嫌だ……いや…いや!!!



目を瞑ればいいのに、瞑ることが出来なくてただひたすら、叫ぶわたしの姿をじーっと見つめていた。



「……ん、くん…」

「A……?」

「けん、くん……拳、くん…」

「しっかりしなさい、お母さんよ」

「おか…さん?」



気付けば、再び病室のベッドで横になっている私。脇に立っていたのは徳島にいるはずの母親の姿が。



「お母さん…どうしてここに?」

「Aが倒れたって電話があって飛んできたのよ」

「ただの、熱中症なのに?」

「……ただの熱中症じゃないでしょう?」

「え……?」



ひどく心配そうな顔をする母親に、私は今の自分の状況を一生懸命整理した。

あれ、確か…彩加が居て……その後…拳くんたちが来てくれたんだっけ……



「そうだ……拳くん!」

「拳…くんって、福良さんとこの?」

「そうだよ…!お母さん、拳くんは幼稚園の頃引っ越したんじゃないの?」

「そ、そうだよ。あなたが年長の頃に香川に家族で引っ越してったよ…」



引っ越してるのは…どうやら事実のよう。じゃあ引っ越した後…本当は…



「お母さん…引っ越した後、私と拳くんは会ってないって言ってたけど……本当は会ってたんじゃないの…?」

「っ…どうして…?」

「夢に……出てくるの…高校生くらいの拳くんが……」



……母親の表情を見るあたり、どうやら私の夢は私が作り上げたお話しではなく、本当に現実であったことのようだった。



「どうして…!なんで、幼稚園以降会ってないなんて…嘘を…」

「……仕方なかったのよ…」

「……あの、事件が関係してるの…?」



はっきりとは、思い出せない。断片的に、夢で見ただけしか…あるのは恐怖のみ。何が私をそんなに怖がらせているのか、拳くんを遠ざけてしまっているのか。



「Aが知りたければ、話すよ」



世の中知らなくていい事の方が多いのに、なんで聞いちゃったんだろう。




.

忘れることの出来ない傷痕→←この胸に巣食う悪夢



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (51 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
215人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , クイズノック , 福良拳   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:りんご | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年7月29日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。