幼い頃の楽しい記憶 ページ16
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「改めて」
「卒業おめでとう、A」
「ありがとう、お父さんお母さん」
3人のグラスが食卓の真ん中で軽快な音を放った。
3月、私は無事に早稲田大学を卒業。院には進まず、私はQuizKnockでそのまま活動する事を決めていた。その話を直接両親にするため私は実家である徳島に帰ってきていた。
「ところで、A。お前、院には進まんのだろ?卒業後…どうするんだ?」
「その事なんだけど…」
母親にはQuizKnockの話はしていたが、父親に話すのは初めてだった。親世代にはなかなか馴染みのないQuizKnockでの活動に父親はどんな反応を示すのか…
「QuizKnock…?なんじゃそりゃ、企業の名前なのか?」
「うーんと、企業というか、団体というか…」
どう説明すれば良いのか、苦戦しながらも父親にきちんと自分が今後やっていきたいこと、今やっている事について直接話が出来た。
「父さん難しい事は分からんが、お前が世間の一端を担う大人として、きちんと生活していってくれれば何も望まんよ」
「母さんも同じやね、あんたのやりたい事やって楽しく生きて行ってくれたら満足だわ」
「お父さん…お母さん…」
父は私と母を養うため一生懸命働いてくれていた。母はそんな父と家族を一生懸命支え続けてくれた。父と母は、私の誇りだ。いつか、お父さんみたいな人と結婚して、素敵な家庭持ちたいな。
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「お母さん、動画見た?どうだった?」
「QuizKnockのか?面白かったで」
「良かった〜。帰ったら動画編集者の人達に伝えておくよ」
洗い物をしている母親の隣で皿拭きの手伝いをしながらQuizKnockの話をしていた。あ、動画編集者と言えば……母親に拳くんのことを話そうとした時、母親に名前を呼ばれて顔を上げる。そこには、少しいつもと違う表情の母親がそこに居た。
「…どうしたの?お母さん」
「動画でナレーションしてる、ふくらPって子さ…もしかして……」
「そうなの!幼稚園の頃仲良かった拳くんだよね?お母さんに前教えて貰った」
「あ…うん、そうやね」
お母さんも気付いてたんだ、拳くんに。懐かしさに、少しテンションが上がる私とは裏腹に母親はどこか拍子抜けしたような顔をしている。
「…思い出したの?」
「?幼稚園の頃の記憶?」
「う、うん。そうそう、あんた達いつも一緒に遊んでたからね」
一瞬、ほんの一瞬だけ焦ったような顔をしていた母親だったけど、その表情はすぐにいつもの母親に戻っていて、私も特に気にすること無く話に花を咲かせた。
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時