社長、甘やかさないでください！【2j3j】② (ページ9)

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加「........ふふ、そんな顔してたの」

顔を隠す手の隙間から覗き込んで見えた顔は見たことないくらい蕩けて、潤んだ瞳は熱を孕んでいた。

「…あ、みちゃだめ、です」

絡まった視線はすぐに顔ごと逸らされて、ほんのり赤らんだ首元が目につく。

「A、」

「だいじょうぶです」

「....なにが？」

意地悪とわかっていても、逃したくなくて。少しずつ上がる口角を隠さずにまた一歩近寄る。

壁に寄りかかるように逃げようとするAを、ほとんど囲む形で「大丈夫？」ともう一度聞く。あくまでまだ体調を心配するフリをして。

「顔、見せて」

「やだ」

「…お願い」

「ん！やだ！」

「ふふっ、そう。……かわい。」

思わず心の声が漏れると、Aは少し怒ったように俺の胸板に手を置いてグッと力を込めた。細い腕で弱々しく抵抗し、唇を噛み締めて上目遣いしてくる姿が本当にかわいい。

「はなれて、」

「何でですか？」

「こういう時だけ敬語…っ！」

「じゃあほら、帰る？」

｢ね？」と、掴んだ手首を優しく揺らして首を傾げる。ふっとこちらを振り返る瞳はまだ潤んでいて。

見透かそうとしなくても分かってしまうその熱の意味に、頼むからそんな顔誰にも見せないでくれ、と心の中で一人懇願する。

加「A、」

『っ、』

加「.....いや？」

何が、というのは言わなくても伝わる空間。手首から手のひらに指を這わせて細い指と絡める。ゆるく握ると、彼女はそれを肯定するようにギュッと目を瞑った。

寸前で薄く目を開けると伏し目でこちらを見る目と視線が絡まって、ふっと軽く微笑むと同時に小さく口付けた。