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第三話 ページ7

『あ、あの・・・』


老人にまだ聞きたいことがあったので呼び止めると、老人は此方を向いて言った。



「なんじゃ?まだ聞きたいことがあったかのぅ?」



『えっと、此処って普通の世界とは違うんですか?・・・あと、記憶って戻した方がいいんでしょうか?』



そう聞いてみると老人はまた話し始めた。



「言い忘れておった。

ここの世界は普通の世界とは違う。

記憶は戻さんと帰れんよ。


・・・お嬢さん、名前は覚えとるかね?」



・・・覚えて、いる。


学生証を持っていたから。



『はい』



短く答えると老人はそうか、と言って口を閉じた。



『忘れていると、いけないことでも?』



「・・・まあ、な。



ここに来る条件は

「強く信頼している人が死んでいること」と

「死にかけている、または大きな傷を負っている」じゃ。


・・・まあ、これらの条件を満たしていても行けないことがほとんどみたいじゃがな。



そして此処を出る条件は

「記憶を取り戻すこと」


「自分の名前を知っていること」

の二つ。


___儂は、その二つの条件を未だに満たせておらん。」



老人の最後の言葉が、やけに耳に残って思わず声が漏れた。



『え___』



だとしたら、この老人は名前と記憶を取り戻すまでここから出られない。


「未だに」と言っているという事は随分と長くここにいるのだろう。



・・・待てよ、ならどうしてここについて詳しく知っているんだ、?



『っ貴方は・・・・・・!!!!!』



どうして此処についてそんなに知っているんですか、という言葉は驚きと焦りによって喉を通って消えていった。



何故なら老人は目の前から消えていたのだから。



『は・・・?』



私一人となった橋には私の情けない声が木霊した。




.

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作者名:秒で消えたママ | 作成日時:2021年2月5日 20時

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