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「あ、そういえばね」
お弁当を食べる手を止めて友達の顔をじっとみつめる。コンビニの袋から半分飛び出たクッキーの袋が友達の手の上でそっと止まった。
「みんながかっこいいって言ってた、ほら、あの4組の」
「「月島くん！！？！？！？」」
「うん、まぁそうなんだけど…」
周りの女の子たちの余りの食いつきの良さに玉子焼きを落としかけてしまった。危ない危ない。
「この前会った時にね、洋楽聴いてたよ」
「洋楽かぁ…流石月島くんだわ……」
で、なんて名前のバンド？
物凄い勢いで聞かれたことに驚いて、少しだけ返事が遅れた。
「あのね、私もアルバムもってるんだけど、」
そういってiPodの画面を傾けてみせる。
これ、この単語なんて読むの？
え、チェリッシュだよ。胸に抱くって意味。
ふぅん、洋楽ってよく分かんないなぁ。でも月島くんが聴いてるなら聴いてみなきゃ
目の前で繰り広げられるキャピキャピした会話に、ちょっとだけ目を丸くして。
(そんな動機で興味ない音楽も聴けちゃうのかな)って首を傾げて。
高校生ってよく分からないなぁとギュッと目を瞑ると、なんだか無性に屋上のてっぺんから空を見上げたくなった。
イヤホンを耳に突っ込んで、音量を最大にあげて、ガンガン響く音楽を聴きながら空を見上げるんだ。
「ねぇ、A、このCDって明日持ってこれる？」
「あ、うん。去年のアルバムがいちばん有名だからそれ持ってくるね」
「まじ？ありがと」
「あ、あとね、私5時間目サボる」
「え？」
珍しいね、と目を見開いた友達にそうかなぁと曖昧な笑みだけを返して。
全部全部吹っ飛んじゃえって願いながら誰もいない屋上への階段を登った。
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作者名：柚子 | 作成日時：2014年8月20日 21時
