合わないピントの眼鏡越し(Lt.BLU) ページ34
最寄り駅につくと、そこにはなぜか中島くんの姿があった。
「おかえり」
「…ただいま」
応えておきながら頭の中には疑問符がいっぱい。
「なんで?」
「心配だったからすぐ帰らせてもらいました。先に駅着けてよかったです、最寄り駅は知ってても家までは知らないから」
中島くんとゆっくりゆっくり坂道を下る。
(今日の感想を言った方がええんやろか)
(しゅっとしてはった!とか?いつもしゅっとしてはるわな…)
(招待してくれてほんまありがとう!とか?それは開演前にも言うたしな)
(あかん、ほんま むずむずする…)
「そんなに無理に話さなくてもいいですよ。Aさんとは無言でもあんま気になんないや」
「うん…」
「あの、具体的に、どうだめなやつだったか教えてもらえます?」
そんな中島くんはこほんとひとつ咳払い。
「浮気されててん。なんべんもなんべんも繰り返さはったんや。もうやめよ、絶対別れたんねんって思っててもいざ直接会ったらなかなか言い出されへんかった」
「元彼がかっこよくて浮気性だったから、"かっこいい人とは付き合えません"?」
「うん…」
もちろんかっこいい人みんなが浮気性なわけじゃないことは分かってる。
でもやっぱり 怖い。
「私って可愛くもないし、どこに魅力があるわけでもないやん。そんな女と釣り合うわけもないしな」
「なにか言われたんだ?」
「私に振られた瞬間、今までの優しい態度が急にころっと変わって"せっかく付き合っててあげたのに"って。"かっこいい俺と付き合えてよかったでしょ?夢みせてあげたんだよ"って」
ぱたり、ずっと横を歩いていた中島くんが立ち止まる。
どうしたんだろう 中島くんを振り返った。
1歩1歩 ゆっくり後ろに下がっていく。
「かっこ悪いとこ見せれば可能性あるかな?って思ったけど、やっぱそれ無理」
「え、それって」
どういうことでしょうか…
やっぱり告白はなしってこと?
それはそれで気分が沈んでいくどっちつかずなずるい私。
嬉しいって思ったり、断ったり、でもやっぱりなしにされるのは悲しいとか。
わがままでしかない。
でも女の子って案外こんなもんじゃないのかな?
「違うよ、Aさんが今思ってるのは違う」
「違う?」
「好きな子にかっこ悪いとこなんて見せれるわけないじゃん。かっこつけたいもん。俺のかっこいいとこいっぱい見せて、もっと俺の事知ってもらう」
涙が溢れた。
もちろん 中島くんの気持ちが嬉しくて。
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作者名:もぶ | 作成日時:2017年1月24日 15時