cosmic is きらきら (ページ31)

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合わないピントの眼鏡越し(Lt.BLU) ページ31

「かっこいい人とは付き合えません、ごめんなさい」

なんてもったいない。
非常に馬鹿馬鹿しい言葉。

彼をすりぬけて家路を急いだ。

彼は一つ下の学年。
同じ映研のサークル仲間であってそれ以上でもそれ以下でもない。
彼と私は好きな映画のタイプも違うし交友関係も違うタイプで外見も釣り合わない。

彼はみんなの憧れ…所謂パーフェクトヒューマンってやつだ。

そんな中島くんが、こんな地味でなんの取り柄もない私のこと？どんな冗談だよって。
それに、彼とはほとんど接点はないはずで。
夏合宿の時、少しだけ話す機会があったものの。
それきり、なんにも、音沙汰なく。
LINEだって個別にやりとりした覚えはない。
鍵をつけたSNSの申請がきたくらいだった。
そのSNSだって、友達の写真やつぶやきに『♡いいね』するくらい。
投稿って言ったって、BOXに置いてある花が咲いてたよーとか、今日暑い、寒いとか鴨川の風景とか。

顔に集まった熱を少しでも分散させるべく早歩きで駅に向かう。

目の前には赤ちゃんを抱っこした若いお母さん。
ばたばたと暴れる赤ちゃんの靴下がずり落ちていくのに気付いた。
落としそう！

駆け寄って地面に落ちる寸前で受け止めた。

「靴下、落とさはりましたよ」

「あ！ありがとう！もー落としたらあかんやん」

抱っこ紐の中、目が合った赤ちゃんは絶賛人見知りかな？そっぽ向いちゃったけど。
どうもって頭を下げたお母さんの後ろ姿に手を振った。

「Aさん」

「え？！」

振り向くと中島くん。
…見られてたのが恥ずかしい。
だめなんだよ、こーゆーの。
背の高い中島くんはにこにこと私を見下ろす。

女子高出身で男の子に免疫ないのも手伝って、
この空気感…蕁麻疹出そうなくらいむずむずしてくる。

吹き飛ばしたい。
私は前を見据えて捲し立てた。

「あれ？中島くん地下鉄やったっけ？自転車とちゃうかった？ほら、なんかむっちゃ高そうなやつ」

「地下鉄の気分なんで」

関東出身の彼はわざとらしく地下鉄のイントネーションを私に寄せた。
てゆか普通に会話してるけど、ついさっき胸きゅんな告白を不躾にお断りした覚えが。

四条に用事があるって笑った顔はやっぱり綺麗だった。

「俺ってかっこいい？」

「え、」

「かっこいいって思ってくれてるから振られたってことですよね？」

ぐぅ。
言葉のチョイスを間違えた。