Luv ya(ORN) ページ30
「…サロンまで送る」
「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて!」
朝7時。
普段の俺だったら起きれてないけど妙にすっきりと目が覚めた。
Aがベッドから出る。
本当はAの手を引いて、もう1度ベッド戻して、未練がましく『別れたくない』って言いたい。
諦められない。
Aに手を伸ばそうとする。
「カフェオレ作ってあげるね」
振り返って微笑み、俺の手を交わした。
俺がやりたいことも、俺の気持ちもAには手に取るように分かるはず。
それが2人の距離。
俺はコーヒー飲まないけど、Aはカフェイン中毒かってくらいコーヒーが好きだから
いつの間にか俺の部屋にもおしゃれな陶器のドリッパーとおしゃれなサーバー、ペーパーフィルターが置かれてる。
置きパジャマはしなかったくせに、それはそれはしれーっと集まってた。
俺用にAは温めた牛乳を注いだマグカップにコーヒーを注いでく。
ぐるぐるぐるって放射線状のコーヒーが牛乳の白とじわじわ混ざり合う。
俺とAも、こうなれればいいのに。
白が多いカフェオレが出来上がった。
「昨日の館山デート楽しかった!あーゆーの久しぶりだったね。…最後にすっごいいい思い出ができた」
助手席のAの表情をちらっと横目で確認する。
まだ付き合ってすぐの頃はよく館山に連れていったけど…
最近は手軽に近場だったり、むしろお家デートだったりしたから。
「うん!すっげー楽しかった!…っ」
"また行きたいよね"って言いかけて、止めた。
生憎の天気。
まだ雨は降ってないけど"お足元が悪い中"なんていう一文を付け加えること間違いなしな天気。
「大貴」
「ん?」
「大貴と出会えてよかったよ。だからこうなることも後悔してない」
「俺も、Aと付き合えてよかったよ」
…別れる後悔は、絶対する。
今だって信号赤にならないかなって考えてた。
この先にある信号機が全部赤になればいい。
そしたら送り届けなくていいし別れることもない。
なんでAだけにできなかったんだろうね。
けどもう今更遅い。
いつもより華やかなAが助手席のドアを開ける。
「今までありがとう」
「…俺こそ、ありがとう」
「元気でね」
バタン。
いつものコロコロを引いて、ヒールを鳴らして歩くAの後ろ姿が見えなくなるまで。
End
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初悲恋。
大好きなシドさんのある歌が元ネタでパクりではなくオマージュです。尊敬してます。
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作者名:もぶ | 作成日時:2017年1月24日 15時