【銀魂】今日もお江戸は平和です

第十九訓 ページ20

坂田side



「俺、今日一銭も持ってねーんだけど。マジで奢ってくれんの？」

「えぇ、マジですよマジ。好きなだけ食べちゃって下さい！」



「バイキングなんで気にせずどうぞ」と、向かいの席で笑いながら言いやがるA。周りに座るのは若い女子が殆どで、それに溶け込む勢いのコイツは俺だけ一人浮かせたいのか、なんなのか。


…どうしてこうなったんだっけ。



「時間制限あるんで、モタモタしてると全部食べれませんよ！」



いつもよりテンション高くね？いや、いつもがどんなのか知らないが。少なくとも家に押し掛けて来た時よりは幾分か高い。


…そうだ、団子屋行こうとしてたらコイツに会って「行きたい所あるんで行きましょう」とか言われて来たんだった。


聞けば、今いる場所…所謂スイーツバイキングには前から来たかったらしいが、一人で入るのが恥ずかしくて入れていなかったらしい。

恥ずかしいという感情がコイツに存在していたのか。



「一人が嫌だったら俺とじゃなくてもいいだろ。お仲間誘ってくれば良かったじゃねーか」



タダ飯＋スイーツバイキングなんて得しかないため誘ってくれて嬉しいけども。裏がありそうな気がしてならない。

そう疑いの目で見ていると、先程のテンションは何処へやら、食べる手を止め急に黙り始めた。


暫し訪れた沈黙にマズい事を言ってしまったのかと内心焦っていれば、少し照れ臭そうに「真選組の皆とじゃなくて旦那と来たかったんです」と。



「…は？」



今まで見たのとは違う、はにかむような、ふにゃっとした笑い方と様子に思わず素っ頓狂な声を出してしまったけれどこれは仕様がない。コイツが悪い。

さっきよりも焦りというか、それに加え動揺も混ざって何が何だか分からなくなっていると、気にせずAがまた口を開いた。



「旦那が甘党だって神楽ちゃんから聞いて。真選組の人って甘いの好きな人少ないですし…ほら、この間のお詫びも兼ねて」



「神楽ちゃんとメガネ君がいないのはちょっと残念なんですけど」と言ってプリンを口に運んだA。

……こいつ、



「お前ってそういう奴なのな」



明らかにあの部分だけ聞いたら思わせぶりな発言に一瞬、ほんの一瞬だけ、ドキッとしてしまったのをごまかす様に水を飲み、はぁ、と溜息をつく。

そりゃ数える程度にしか会っていない奴にいきなりそういうのは無いと分かっているけれど。



「溜息つくと幸せが逃げちゃいますよ」

「お前のせいだ」



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