Give me Biscuits!

何気ないの繰り返し(西畑) ページ34

1/3 (彼女)



今日の夕飯の献立は、
ごはん、ナスの辛みそ炒め、だし巻き玉子、水菜とベーコンのサラダ、きゅうりの浅漬け。
それから冷えたビールを添えて。
居酒屋か、とゆるいツッコミを貰いながら、いただきますした。



「だし巻きふわっふわや！今日は大根おろしも付いてるし贅沢やなぁ。」


「ちょっとお醤油たらそかなぁ。いる？」


「うん、かけて。」



はーいと軽い返事をしながら、醤油さしを傾ける。
淡い黄色に茶色がじんわり。
今日のだし巻きはうまくできたと思ったのになぁ。
大ちゃんがいろいろ感想を言ってくれる時は、大抵ビジネスオイシイ。



「ナスうんまぁ〜〜」



これこれ。
本当に美味しいと思っている時は、これなのだ。
だし巻きは何度か作ったことがあるけど、このリアクションがなかなか引き出せない。
大学生になると同時に一人暮らしを始め、料理には自信があっただけに、ちょっと痛い。
辛みそ炒めをももぐもぐしながら、お箸に次の白米をスタンバイする大ちゃんを見て、かわいいなぁと悲しいなぁが交差する。

そもそも何故、だし巻きにこだわるのかというと、それは、数ヶ月前に買ったアイドル誌のせい。


"作って欲しい手料理は？
-だし巻きかなぁ。居酒屋系の食べもん好きなんですよ(笑)"


そんなインタビュー記事を見たら、だし巻きでも「うんまぁ〜」を引き出したくなるじゃないか。
ちなみに買った雑誌は大ちゃんに見つからないように、押し入れの隅に隠している。
大ちゃん曰く、雑誌の質問は恋愛めいたものも多くて恥ずかしいから読まないでほしいのだと。
けど、こっちとしても、良い嫁になるヒントを見逃すわけにいかんのよ。



「どうしたん？」


「え？」


「難しい顔してんで。」



言われて自分の眉間をさする。
あかんあかん皺になる。
考えごとをする時に眉を寄せる癖がなかなか抜けない。
おかげで悩んでることがあったらすぐにバレる。
ビールを喉に流し込みながらも、大ちゃんの目線はこっち。話してみ、て顔してる。



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