Give me Biscuits!

ドキドキさせたい(福本) ページ28

1/2 (高校生/彼女)





「あ！」



学校帰りの電車の中。
横並びの席1列分離れたところにAちゃんを見つけて大声をあげたら、隣のおっさんに睨まれた。
Aちゃんの方は、見つかった…て感じ。
口は開いてるけど、あ、と言ったかは分からない。


身構えられてるなぁ。
左肩にかけたカバンの持ち手に添えられている小さな両手は、心なしかぎゅっと力が入ってるように見える。
しゃあないか。
学校では付き合ってんの内緒にしてるし。
俺と同じスクールバッグなのに、Aちゃんが持つと随分大きく見える。
つり革持たんでも平気なタイプなんかなーと思いながら向かいに立ったら、自然と見下ろす形になった。



「福本くんもこっち向きやったんや。」



焦ってるのか、進行方向と逆を指差すから、思わずふっと笑ってしまった。
Aちゃんははてなマークを飛ばした後、気が付いてそぉ〜っと指を反対方向に変えていた。
いやいや、遅いわ。
てかバレてるのに変えるんや、てさらにおもしろくなって、ふはっと吹き出したら、いたたまれない〜って顔で窓の方を向いてしまった。

横顔になったAちゃんを見る。
授業中はほぼ同じ高さにある顔が自分より下にあるだけで、全然違う人みたいだ。
まだ高い太陽の光を浴びて、髪の毛が薄茶色に透ける。
電線の影がAちゃんの肌をなぞるみたいに、上から下へと流れる。
綺麗やな…。
そんなことを考えていたら、Aちゃんが急にこっちを向いた。



「な、何？」


「ずっと見てくるから、むしろ福本くんが何かあるんかと…。」



なんでバレたんやろと不思議がってたら、窓に映ってるから、て返された。
うわ、不覚。俺にやけてなかったかな、恥っず。



「せやな…あー、Aちゃんどこで降りるん？」




・・・・・




いやぁ…我ながらノリってすごい。
俺んちの最寄駅の改札を通るAちゃんの背中を見て、しみじみ思う。

電車の中で教えてくれた駅は、俺の家からもう３駅の所やって、気づいた時には「ほな俺んち寄ってく？」などと、チャラ男みたいな誘い文句が口から出てた。
Aちゃんが硬直したのを見て、まずった！と思ったけど、しばらく考えるように目を泳がせてから、お邪魔しますと頷いてくれた瞬間は、思わずガッツポーズしそうになった。
念のため言っとくけど、俺はチャラ男ではない。



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