Give me Biscuits!

万有引力(小島) ページ27

1/1 (彼女)





最近よく思うのが、



「健ちゃん見とったら抱きつきたくなるねんな。」


「は？今日はえらい素直やな。」



真剣な顔で、雪降るんちゃう？とか言うから、
広い背中をバシッと叩いたら大袈裟に痛がられた。



「なんで抱きつきたくなるんやろね〜。」


「なんでやろな〜。」



夕陽の帰り道は、涼しい風が抜けるようになった。
カランコロン足元から聞こえる音も、そろそろ聞き納めかな、と思うとちょっぴり寂しい。
初めて下駄履いてるの見た時は、変な人やなぁと思ってたけど、もう慣れてもた。
そのうちトトロとか連れてきても、驚かへんと思う。


私が変なもんて可愛いからな〜と和んでたら、
健ちゃんがいきなりビシィッとそれはもう音が出そうな勢いで空を指差して、こう言った。



「引力や！」



……引…力。
いきなり何言い出すんやこの人は。



「高校ん時、物理で習ったわ。"大きい物ほど引力も大きい”って。」



それは、つまり？



「Aがくっつきたくなるんも仕方ないわ。」



そう言って健ちゃんが、ん？と両手を広げる。
チラリと目線を上げれば、勝ち誇ったような表情でこっちを見てる健ちゃんと目が合った。
あぁぁぁもう！！



「恥ずいからええです。」



って
いつもやったら拒否るとこやけど、
今日は素直な私らしいんで…



「ほんならこれも不可抗力やんね。」



トトロにくっつくメイちゃんもこんな気分やったんかな、なんて思いながら、大好きな健ちゃんにぎゅっと抱きついた。





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