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頭を抱えて、更衣室のベンチに座り込んだ。
何をわざわざ蒸し返してるねん。
数分前の自分、あほか。
頬をペチペチ叩いて後悔したけど、どうしようもない。
グズグズしながらレッスン着に着替えた私は、今から軽やかに踊らねばならんというのに、重い足取りでレッスン室へ向かった。
「なぁ」
「ほぎゃっ?!!」
突然肩を叩かれて、めちゃくちゃ大声が出た。
振り向くと、呆れ顔の晶哉。
「ど、どしたん?」
「こっちの台詞や。入らんの?」
あなたがいたら気まずいから、こっそり部屋の中を覗こうとしてました、なんて言えない。
うまい言い訳が思いつくより先に、柔軟しよ、と手を掴まれて、部屋の中へ引っ張られた。
「私ら喧嘩してるんとちゃうん?」
晶哉の意図が汲み取れない私は、床を見つめたまま尋ねる。
「喧嘩はちゃうかな。」
「ほんなら、何?」
晶哉は、私の手を掴んだままだ。
「怒ってるんかなーとは思うんやけど、理由が分からんのよ。それで謝っても意味ないから、教えてや。」
しばらく返事もなく、教えてくれないかな、と諦めかけたその時。
「A」
晶哉に、抱きしめられてる?
遊びで私から抱きつくことはあるけど、これが、そういうのじゃないことぐらい分かる。
何も言えずにいると、耳元でもう一度名前を呼ばれた。
目線を上げると、鏡に映った自分たちの姿が目に入る。
晶哉の背中は、華奢に見えるけど、私の体がスッポリ隠れてしまうくらい大きい。
「Aはさ、いつも俺に抱きついてくるけど、ドキドキする?」
晶哉からの質問の意味が分かってしまった気がした。
けど、それはあまりにも自意識過剰なもので。
落ち着け、落ち着け、自分。
「いつもはしやんかな。」
でも今は…そう続けたかったのに、晶哉の体が離れて、今度は頭だけが近づいてきた。
どんどん縮まる距離。
どこ見たらええんかな、て。
分からなくて目を瞑る。
くしゃりと前髪がおでこに押さえつけられる感触。
私の肩を掴む掌がさっきより熱い。
お互いの息がかかる。
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三十谷みそ(プロフ) - くまさん» くまさん読んでいただいてありがとうございます!「中距離恋愛」はその次の「今日も今日とて…」とセットのお話ですが、その続きまでは考えていませんでした。。すみません!でも大ちゃんとのすれ違いは書いてて楽しかったので、いつかシリーズ化できれば…! (2022年2月21日 23時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
くま - 主様のお話いつも読ませて頂いてます!中距離恋愛の続き楽しみにしています! (2022年2月21日 0時) (レス) id: 0f63c42052 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - 葉乃さん» 西畑には流星か大橋くんに背中押されてがんばってほしいです(笑)あ、やっぱり!読み方でHano.さんかな?と思いました!新アカウントでも読んでもろてありがとうございます! (2022年2月18日 18時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
葉乃(プロフ) - 女の子と西畑くんやっぱりすれ違ってんじゃん!!小出しじゃなくて丸出しでいけよ!さっさとくっついてくれんとこっちがもどかしい!!あ、色々あってアカウント変えたんですけど、Hano.です!みそさんの書く文章大好きなので、これからも頑張ってください! (2022年2月18日 0時) (レス) @page48 id: 6481b17959 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - Hano.さん» 切ないの好きなんですよ〜!あぁぁ…て苦しくなりながら書いてます(笑)Hano.さんのコメントめちゃくちゃ嬉しくて、いつも励まされてます!ありがとうございます。 (2021年11月22日 19時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三十谷みそ | 作成日時:2021年8月5日 23時