9.夏の林間合宿 ページ4
〇
刺さるような日差し、温い風に蒸した空気。
夏本番に限りなく近い天候の中。
高専の訓練場には木刀を手にひっくり返った乙骨と、そんな彼の額を棒先で突く真希、それを憐れむような目で傍観する棘とパンダ、Aの姿があった。
「一旦休憩にしよー…暑すぎて溶けちゃいそう…」
「しゃけぇ……」
「お前ら軽いランニングしてから動いてねぇだろうが。てか暑いならパンダから離れろや！見てるこっちが暑苦しいんだよ！」
「ふ、暑さにも勝る程のモフさがお「離れよっと/おかか」手のひら返すの早いよお前たち。人の心ある？？」
「あはは……」
木陰に来た真希は、拗ねて人心の何たるかを説き始めたパンダな呪骸を無視して水分を取る。
最初はｵﾛｵﾛとしていた乙骨もパンダから視線を逸らし、ペットボトルを傾けていた。
端から聞く気のない棘、Aが枝で地面にお絵描きし出したのを見て、パンダは口を閉じた。
人心を説いた所で呪術師には無駄じゃないか、そもそも真面目に聞く奴なんて誰一人いないという事実を改めて理解した。
呪術師に普通の人間らしさを求めちゃいけない。
「そういやA。お前、雄英行かなくていいのか？」
「んー、お休みだって。一応病み上がりだよ私」
「血だらけだったもんね…。もう大丈夫？」
「うん！五条先生と家入さんからOK出てないけど平気」
「おかか！」
「それを平気とは言わねぇんだよ。頭の血管切れた奴が何言ってんだ」
「らしいね。あの場に先生いなかったら最悪死んでたって言われた。元凶は先生なんだけどね」
自身の頭を小突きながら苦笑したA。
その拳を棘が「おかか」を連呼しながら大慌てで受け止め、悪化したら如何するんだとﾌﾟﾝﾌﾟﾝ怒る。
宥めようとAが棘の滑らかな髪を撫でてやれば、顔を真っ赤にして、さらに語気を強めた「おかか」を繰り返した。
一部始終を見ていた他の3人は、片やﾆﾔﾆﾔと、片や困り顔で笑っていた。
刹那。ﾋﾟﾘﾘｯ、と着信を知らせる音色が鳴る。
「誰のだ？」
「あ、私だ。相手はーっと…珍しいな、相澤さんか」
「？？」
「依頼先の先生だよ。棘は会った事ある筈」
なんだヒーローか、と全員の意識が逸れた所でAは応答マークをタップした。
「おはよう相澤さん。何かあった？」
『はいこんにちは。連絡早々で悪いが、敵連合の方で少し動きがあった。時間は？』
「十分にあるよ。詳しく聞かせて」
○
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2998人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コロッケ - 本当に好き！主人公の性格とかも面白いしヒーローと呪術師の価値観の違いも上手く書かれてて最高です！是非更新宜しくお願いします！ (11月17日 2時) (
レス) @page17 id: 0002858abd (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 更新されててびっくりしました！これからも更新がんばってください！応援してます (10月19日 20時) (レス) @page16 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - 占ツクにこんな文章のしっかりしてる最高の作品があったとは。もう何回読み返したかわからない。更新お待ちしてます大好きです (8月30日 18時) (レス) id: b3cc1c8641 (このIDを非表示/違反報告)
わらび - 投稿ありがとうございます！オリ主ちゃんや、ストーリーが好みすぎて何度も繰り返し読んでます！これからも応援してます！ (8月21日 21時) (レス) @page15 id: 852819b8c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのゴリラ - ほんまに好きです最新まってます (8月15日 23時) (レス) @page14 id: fa8371b6ca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハル | 作成日時：2022年8月29日 22時
