＊ ページ17
○
林間合宿が始まってから2日が経過した。
血反吐を吐く思いで各々が死ぬ気で個性と、自分と向き合い続けた、今までにないほど濃密な日々だった。
虎によるブートキャンプを朦朧とした意識の中、気合いで乗り切り夕飯作りに取りかかる頃には、全身が漬物石でも乗せられたかのように重く、殆ど動けなかった。
「......そういや、月慕ちゃん見てなくない？」
「言われてみれば全然顔見てねぇな」
「誰か月慕ちゃん見た人いるー？」
葉隠さんの呼びかけに皆が顔を見合わせる。
発言から察するに女子が寝泊まりする部屋にも帰っていないようだ。八百万さんが言うには、荷物は置いてあり漁った形跡もあるが寝泊まりしているような跡はないらしい。
僕は先程まで話していた轟君に問い掛けるが彼も初日以降見ていないと言う。「緑谷はどうだ」と言われたので僕も知らないと返した。
「風呂上がりに廊下で会って、それからは見てすらない」
「そっか...その時に何か言ってた？」
「『見回りを口実に愛しい君へ逢いに行く』と。夜の間に仕事してるんじゃないか？」
「夜の間...。なら朝は僕たちと入れ違いで戻ってるのかもしれないね」
轟君の他にも、補習組の皆が深夜の森を散歩をするかのようにのんびりと歩いていた所を相澤先生と共に見たという。
日が落ち始めた今頃。きっと起きる頃だろう、と結論付けた僕たちの話題は、次第に今夜行われる肝試しへと移っていった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿
僕たちは油断していたのかもしれない。
否、場所を明かされていないこと、プッシーキャッツや月慕さんがいること。万全ともいえるだろう体制だった。
「なんか…焦げ臭い」
ピクシーボブの言葉で発見した山の向こうに上る黒煙。そこから数分で状況が一変したのだ。
僕らを庇うように立つマンダレイや虎さんの背中の向こう側で、戦隊物のように並ぶ敵が数人。
「『生殺与奪はステインの仰る主張に沿うか否か』ね。敵のくせに、随分と生温い戯れ言を」
武器を構えた男＿＿＿自称『
中性的な見目で、フードから覗く顔はまだあどけなさが残る僕らと同世代くらいの子ども。
「五月蝿いぞ。お前も同じ敵連合なら、此方の指示に従え」
「君らと仲良しこよし連携する仲になった覚えは生憎無い。よって、お前の指示に従う義理も意思も無いよ。残念ながら」
○
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2997人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コロッケ - 本当に好き！主人公の性格とかも面白いしヒーローと呪術師の価値観の違いも上手く書かれてて最高です！是非更新宜しくお願いします！ (11月17日 2時) (
レス) @page17 id: 0002858abd (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 更新されててびっくりしました！これからも更新がんばってください！応援してます (10月19日 20時) (レス) @page16 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - 占ツクにこんな文章のしっかりしてる最高の作品があったとは。もう何回読み返したかわからない。更新お待ちしてます大好きです (8月30日 18時) (レス) id: b3cc1c8641 (このIDを非表示/違反報告)
わらび - 投稿ありがとうございます！オリ主ちゃんや、ストーリーが好みすぎて何度も繰り返し読んでます！これからも応援してます！ (8月21日 21時) (レス) @page15 id: 852819b8c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのゴリラ - ほんまに好きです最新まってます (8月15日 23時) (レス) @page14 id: fa8371b6ca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハル | 作成日時：2022年8月29日 22時
