＊ ページ11
〇
「＿＿＿＿＿悪いね諸君。合宿はもう、始まっている」
相澤さんが悪人顔よろしく不気味な笑みを浮かべた瞬間。
髪や頭皮を突き刺すように通り抜ける鋭い風に、ｸﾞｯと内臓の持ち上がる感覚。
恐怖も緊張も感じていないのに素早く鼓動する心臓が面白くて、爽快だった。
近づく地面を前にｸﾙﾘと回って体勢を整え、懐から出した結晶片に着地した。
パンダに毎日振り回されぶん投げられたおかげで、上手な受け身の取り方も地面とお友達にならない術も嫌という程身に染みていた。
「あっはは！ﾄﾞｷﾄﾞｷするっ、頭もｸﾞﾗｸﾞﾗして楽しい！青猫さんもっかいやってー！！」
「あーっ！月慕ちゃんずるい！」
「俺たちも乗せてってくれよ」
「私は構わないけど……無事に着くか分かんないよ？」
練習がてら乗せた五条先生を校舎の壁に見事めり込ませたことを話せば、皆一様にｽﾝｯと黙った。
流石にまだ命は惜しかったらしい。
「はは、残念。それじゃあ皆仲良く"魔獣の森"攻略、いってらっしゃい。お土産は魔獣が良いな！」
「生け捕りってこと？！」
「無理だわ！！」
「てかマジで行っちゃうわけ！？」
先程の静寂が嘘のように騒がしい場を見下ろし、いつものように笑ってみせた。
おどろおどろしい呪霊の気配とは違うが、微かな息遣いと獣じみた気配を直ぐ其処に感じていた。
一筋縄ではいかなそうな試練は既に開幕の狼煙を上げているようだ。
「私の背後10m先、此方に向かってくる敵らしき生物を複数感知。健闘を祈るよ」
『え？』
これくらいなら許されるだろう範囲の情報を言い残し、ｸﾞﾝｯと高度を上げる。
いくつか間をおいて起きた悲鳴から察するに言葉の意味に無事気が付いたようで何よりだ。
一気に騒がしくなった森に思わず鼻で笑いつつ、崖をも見下ろせる高さで安定させる。
唖然と此方を見返す青猫さん。目も口も大きく開いたその顔にも微かな笑いを零し、背を向けている
「しかし無茶苦茶なスケジュールだねぇ。イレイザー」
「敵が活性化し始めた今、自衛の術が必要だと＿＿＿」
「＿＿＿＿＿＿そうそう。他人を守るなんて宣う前に、自分の身が守れないと」
無駄に死んでいくだけだもんね、と同時に勢いよく仰け反った2人にﾆﾀﾘと口角を上げてみせた。
〇
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2996人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コロッケ - 本当に好き！主人公の性格とかも面白いしヒーローと呪術師の価値観の違いも上手く書かれてて最高です！是非更新宜しくお願いします！ (11月17日 2時) (
レス) @page17 id: 0002858abd (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 更新されててびっくりしました！これからも更新がんばってください！応援してます (10月19日 20時) (レス) @page16 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - 占ツクにこんな文章のしっかりしてる最高の作品があったとは。もう何回読み返したかわからない。更新お待ちしてます大好きです (8月30日 18時) (レス) id: b3cc1c8641 (このIDを非表示/違反報告)
わらび - 投稿ありがとうございます！オリ主ちゃんや、ストーリーが好みすぎて何度も繰り返し読んでます！これからも応援してます！ (8月21日 21時) (レス) @page15 id: 852819b8c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのゴリラ - ほんまに好きです最新まってます (8月15日 23時) (レス) @page14 id: fa8371b6ca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハル | 作成日時：2022年8月29日 22時
