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血と土で汚れた手が形を作り、紅に濡れた面とそれを隠すように垂れた藍鼠から覗いた、爛々と煌めく琥珀の瞳が細められた瞬間だった。
明らかに劣勢だった筈の戦況が気づいた時には逆転し、それから直ぐに決着がついた。
月慕の目に浮かぶ光と同じように鋭く、輝きの増した結晶が敵の四肢を貫いた。
「っ……」
無意識に止めていた呼吸。
自分の片方と似た力だからか、彼奴が操るそれに目を奪われないわけがなかった。
いつかの幼い自分がオールマイトの映るテレビに釘付けだったように、最低限の生命活動すらも忘れて、食い入るように見つめていた。
型に嵌らず、自由な戦い方で圧倒し続ける月慕に憧憬を抱いているのかもしれない。
「……終わった、のか…？」
「で、でも彼奴、呪霊の前で何か喋ってるぞ…！」
クラスメイトの声に、一度逸れた集中を再びモニターへ向ける。
氷柱のように地面へ突き刺さる結晶の上でしゃがんだ月慕が呪霊に何か話をしていた。
チェシャ猫じみた悪戯っぽい、底の見えない笑みを浮かべている。
「あちゃー…始まっちゃった。あの観察癖も直させないと、命が幾つあっても足りないよ」
「……観察、というより遊んでません？彼女」
「呪霊の反応で遊びながら観察もしてる。大方、双子の絆でも試してんじゃない？」
「随分とアグレッシブだね」
「対象が呪霊なだけまだマシな方。あの子、学長んとこのパンダ輪切りにしようとしてたんだから」
慌てて止めたよー、と月慕の担任らしい白髪の男が笑った。
パンダって、パンダか…？そういえばUSJの時、彼奴と一緒にパンダもいたような…。アレの事か？
うぬ…と一人悶々としていると、状況が動いた。
その光景を目にした俺たちは総じて固まった。そして慄いた。
月慕が小突いた結晶が欠片すら残さず忽然と消える。何度も見たその行動。
普段と違ったのはその後で。片割れが祓われた事に取り乱す呪霊を見ながら、彼奴は笑っていた。
嘲るように、蔑むように。片や憐れむように、それを眺めほくそ笑んだ。
思わずぞっとしてしまう程の寒気が背筋を走る。
ヒーロー殺しの時と、同じだった。
画面越しにでも感じる空気に気圧され、指一本すらも動かせない。
「……あのような言動を矯正する気は」
「微塵も無いね！あの冷酷さがAの本質だよ。いいじゃない。イカれてて、如何にも呪術師っぽくて！行き過ぎた善意や正義感よりずっといい」
この圧迫された空間で会話できる呪術師の精神状態にある意味感服した。
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コロッケ - 本当に好き！主人公の性格とかも面白いしヒーローと呪術師の価値観の違いも上手く書かれてて最高です！是非更新宜しくお願いします！ (11月17日 2時) (
レス) @page17 id: 0002858abd (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 更新されててびっくりしました！これからも更新がんばってください！応援してます (10月19日 20時) (レス) @page16 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - 占ツクにこんな文章のしっかりしてる最高の作品があったとは。もう何回読み返したかわからない。更新お待ちしてます大好きです (8月30日 18時) (レス) id: b3cc1c8641 (このIDを非表示/違反報告)
わらび - 投稿ありがとうございます！オリ主ちゃんや、ストーリーが好みすぎて何度も繰り返し読んでます！これからも応援してます！ (8月21日 21時) (レス) @page15 id: 852819b8c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのゴリラ - ほんまに好きです最新まってます (8月15日 23時) (レス) @page14 id: fa8371b6ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハル | 作成日時：2022年8月29日 22時
