そばにいて ページ49
キッチンカウンターの前、西島君は私をじっと見て、私の右腕をとった。
やっぱり素直に帰らせてはくれない。
私、ずるい。
本音を隠して、西島君から逃げようなんて。
でもこのまま、気持ちの整理がつかないまま、今夜一緒にいちゃいけない気がする。
はぁ、ってため息が聞こえて、彼に抱き寄せられた。
ふわぁっと甘い香りに包まれ、私の鼻の奥がツンとする。
『また迷子? 俺のかわいいネコは』
「…」
『すげぇ気まぐれ。俺振り回されてるもん。素直じゃないし、すぐに揺れて、迷う俺のネコ』
西島君がぎゅっと腕に力を入れた。
トクン、トクンって、耳に彼の鼓動。
あったかい。
ドキドキするのに、落ち着く。
不思議な心地よさ。
「西島君…」
『なんで揺れてんの? 話してよ』
まるでネコを撫でるように、西島君は私の襟足から首筋を、ゆっくりと撫でている。
気持ちいい。
本当にネコになった気分。
『みお』
「西島君の曲を聴いて、すごいなって思った。あんなに素敵な歌を歌う西島君の隣にいていいのかなって、不安になっちゃって」
『そっか…不安か』
「だから、今夜は帰った方がいいと思ったの。いったん、気持ちを整理しようと思って」
『整理して、どうすんの? 友達のままでいる?』
「…」
『俺は嫌だって言ったじゃん。友達でいるのは』
低い声が耳元で響く。
咄嗟に西島君から離れようとしたけど、強い力で抱きしめられ、身動きができない。
そのまま耳にキスをされ、彼の吐息が耳にかかる。
そして首筋にも、熱い刺激。
「あっ…」
『そばにいてよ』
「いや、待って」
耳元で甘くささやかれて、胸が疼く。
『嫌なの? 俺のそばにいるの』
「や…そうじゃなくて」
それ、耳元で話すのやめて。
それに、西島君が合間にわざと音を出して耳にキスをするから、変な気分になっちゃう。
『じゃぁ、そばにいてよ。みお』
『みお…』
「ん、…わかったからっ」
離して。
『ふっ、良かった』
西島君は私を離すと、にっこりと笑った。
「……」
『なーに? みお、顔が赤いよ』
「なんか今の、納得いかない」
『そう? 感覚に委ねるのもありじゃない? みおはすぐ俺との恋愛に慎重になるから』
西島君は再び私を抱きしめ、小さく言った。
『そんなに俺のこと、信用できない?』
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さら(プロフ) - 恋葉さん» コメントをありがとうございます。完全自己満な作品に感想をもらえて嬉しいです。その曲知らなかったので聴いてみました。いかようにも解釈できる、想像膨らむ歌詞ですね。好きなシーンを伝えてもらえて最高にハッピーです。読んでくれて感謝です。 (2020年4月24日 3時) (レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
恋葉 - 楽しませていただいております!!!個人的には7ページのチョコレートの話、Da-iCEのチョコレートシンパシーに似ててすっごい好きです(*´∇`*) (2020年4月23日 19時) (レス) id: 35a567dc92 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - てんさん» コメントをありがとうございます。楽しみにしてもらえるって嬉しいですね。これからもニッシーの恋の行方を見守って下さい。 (2019年5月9日 1時) (レス) id: 012c2a9612 (このIDを非表示/違反報告)
てん - いつも楽しみにしてます!この物語のにっしーが好きすぎます(*´ω`*) (2019年5月8日 11時) (レス) id: 3758975c70 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - 憂さん» コメントをありがとうございます。とっても励みになります。楽しんでもらえてよかったです。 (2019年4月25日 3時) (レス) id: 012c2a9612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さら | 作成日時:2019年4月17日 4時