遠い人 ページ48
『みお？ どうだった？』
ぼーっとしていた私に、西島君が心配そうに言った。
そうだ、歌の感想…
「あ…えっと、言葉が見つからなくて。今のこの気持ちをなんて言っていいのか…ただ、また聴きたいって思う」
そう、どんなに西島君を遠く感じても、また聴きたくなる。
「余韻…。そう、この余韻がいいの。切なくて苦しいのに、どこか心地よさも感じずにはいられない…」
『余韻か…なるほどなぁ』
私の隣で日高さんが言った。
西島君は含みを持った笑みを浮かべてる。
そっか…
西島君が表現したかったのは、この余韻なのかもしれない。
うわぁ、すごい。
計算された余韻だ。
『ニッシー、ソロの曲発表できて、本当に良かったね』
宇野さんが言った。
「ありがとう。俺のわがままをきいてくれたスタッフには、感謝してる。もちろんメンバーにも」
『俺達はグループだけど、それぞれの求める音楽があって当たり前だ。逆にそれが無きゃ、音楽家ではいられない。人の心に訴える何かを創造することはできない。そうだろ？』
日高さんの言葉に、西島君と宇野さんが大きく頷いている。
音楽家…
そうだ、西島君は音楽家。
自分の音楽を探し、求める音楽家なんだ。
日高さんと宇野さんの音楽がどういうものか、私は知らない。
でも西島君とこうして深い部分で共感し合っているのだから、お2人もきっと自分の音楽を表現したいと思っているに違いない。
私には到底踏み込めない世界。
やっぱり遠い。
西島君が、すごーく遠い。
胸の奥に、鈍い痛み。
私、一緒にいられるのかな。
一緒にいてもいいのかな…
私はただの会社員で、特に何かに秀でているわけじゃない。
これまでの人生だって、ごくごく普通。
私みたいな人間が彼のそばにいて、大丈夫なのかな。
それから少しして、日高さんと宇野さんは帰った。
2人でグラスやお皿の片付けを済ませたところで、勇気を出して言った。
「…じゃぁ、私も帰るね」
『えっなんで!?』
西島君が素っ頓狂な声を上げた。
そうだよね、さっきまで泊まるつもりでいたもんね、私。
「今夜は泊まらない方が良いかなと思って…」
『だからなんで？』
西島君の声が今度は低く変わった。
その目は私の瞳の奥をじっと見据えてる。
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さら(プロフ) - 恋葉さん» コメントをありがとうございます。完全自己満な作品に感想をもらえて嬉しいです。その曲知らなかったので聴いてみました。いかようにも解釈できる、想像膨らむ歌詞ですね。好きなシーンを伝えてもらえて最高にハッピーです。読んでくれて感謝です。 (2020年4月24日 3時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
恋葉 - 楽しませていただいております！！！個人的には7ページのチョコレートの話、Da-iCEのチョコレートシンパシーに似ててすっごい好きです(*´∇｀*) (2020年4月23日 19時) (レス) id: 35a567dc92 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - てんさん» コメントをありがとうございます。楽しみにしてもらえるって嬉しいですね。これからもニッシーの恋の行方を見守って下さい。 (2019年5月9日 1時) (レス) id: 012c2a9612 (このIDを非表示/違反報告)
てん - いつも楽しみにしてます！この物語のにっしーが好きすぎます(*´ω｀*) (2019年5月8日 11時) (レス) id: 3758975c70 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - 憂さん» コメントをありがとうございます。とっても励みになります。楽しんでもらえてよかったです。 (2019年4月25日 3時) (レス) id: 012c2a9612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さら | 作成日時：2019年4月17日 4時
