君と 3

彼の音楽 ページ47

“どうしようか？”



とってもおもしろかった。



1曲の中に起承転結があって、映像と歌詞がリンクしてる作品。



こういうの、ありそうで無かった。



映画のような、ミュージカルのような。
全てを説明し過ぎず、でもちゃんと曲の世界観が伝わる。



すごい。



西島君はこういう仕事をしてるんだ。



ダンスも初めて見たし、何より歌い方。
今まで私と一緒に歌ってた彼じゃない。
こんな西島君、知らない。



こんなにも多彩な声を持っているなんて、知らなかった。
今までずっと生歌をそばで聴いてたのに。



私、西島君の何を見てきたの。



それくらい、衝撃を受けた。



そして、次に聴いた曲で打ちのめされてしまった。



導入はまるで映画のよう。



あ…横浜、山下公園。
そういえば、あの時、原田主任とのことで悩む私に、西島君はソロの曲の話をしてくれてた。



すごく大事な曲だって言ってたね。
この曲のことだったんだ。



ふと、そんなことを思い出した。



そして流れ出すイントロ。



あぁ、良い曲。



イントロですでに惹きつけられ、胸がぎゅっと締めつけられる。



バラード。
北海道を思い出させる、切ない歌詞。



西島君の歌は、声で感情を表現している。



このドラマ仕立ての映像が無くても、彼の声はこの曲を、この曲のメッセージを伝えてくれている。



こんなにも人の心に訴える歌を、心揺さぶる歌を歌う人だったなんて…



そっか…だから私は、西島君と歌うことが楽しくて幸せで、心地良いんだ。
ずっとそばで、彼と一緒に歌いたいって思うんだ。



今までずっと不思議に感じていたことが、ストンと腑に落ちた感じがする。



と同時に、彼をとても遠くに感じた。



それは、さっきファンの子と一緒にいる彼を見た時に感じた距離とは、比べ物にならない。



そんなものじゃない。



とても深くて大きい何かが西島君の中にあって、彼はそれを音楽で表現しようとしてる。



そして、それができる声を持っている。



それだけじゃなくて、その声を最大限に引き出すための努力も絶対してる。



自分を客観視して、編集することができる。
まさにセルフプロデュース。



選ばれた人だけができること。



クラシック音楽の世界も、スターと言われる演奏家は皆、そういう人達だって何かで読んだことがある。



今ここにいる西島君がそんな演奏家の人と重なって見えて、近寄り難い存在に感じた。

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