君と 3

素直な気持ちを ページ40

『みお、話して？』



「…嫌だった」



『なにが？』



「西島君がファンの子と話してるのが。楽しそうで、嫌だった」



言っちゃった。
西島君の顔が見られない。



いい歳してやきもちなんて、しかもファンの女の子に。
こんな子どもじみた感情、だめだよね。
西島君は芸能人で歌手で、ファンがいることはすごく良い事なんだから。



『みお、それって…』



西島君が私を覗き込もうとするから、私は顔を背けた。



「わかってる。嫌だよね。西島君にとってはファンの子は大切だもん。こんな嫉妬なんて…」



『みお』



「それにね、さっき聞いちゃったの。西島君が女の子に、その…誘われてるところ」



もう嫌だ。
思い出すだけで胸が苦しい。



涙出そう。



「胸が痛くて苦しくて。西島君がその子と行っちゃったらどうしようって。他の子に触れてほしくないって思って、苦しくてっ…」



『みお…もうわかったよ』



言葉と共に、彼に抱きしめられた。
甘い香りと強い腕の力。



『みお…』



耳元で切なく響く甘いささやきに、さらに胸が疼く。



「こんな風に苦しくなるなら、友達のままでいたい」



『俺は友達のままは嫌だ。みおの本当の気持ちが知りたい』



ゆっくりと体を離す西島君。
そして、知らぬ間に濡れていた私の頬を両手で包んだ。



『この涙の理由は何？ 今日これで3回目。俺を見てみおが泣くの』



「…」



『みお、こわがらないで。素直な気持ちを教えて』



優しい声と眼差しに、さらに涙が溢れる。



もう、伝えずにはいられない。



「好き、西島君の事が好きなの」



『俺も好きだよ。みお』



「西島君の事で胸がいっぱいになって、涙が出るの」



『もっと、俺でいっぱいになってよ』



「でもこわい。これ以上好きになるのが」



『大丈夫、俺に全部委ねて。後悔させないから』



ラブソングような、彼の甘い言葉。
嬉しくて、さらに涙がこぼれた。

酔いしれたい(side N)→←怒ってる？

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す