君と 3

隙だらけな彼女(side N) ページ38

酒が入ってるせいか、ふわっとした雰囲気のみお。
これでも、はやる気持ちを抑えていつもよりゆっくり歩いてるのに、速いだなんて。



いとも簡単にこめかみにキスを許し、俺に抱き寄せられる彼女。
顔が真っ赤だ。



満足感とともに嫉妬心がわく。



送るって言ったのに、どうしてあいつと一緒にいたの？
ずっとあいつと飲んでたの？
こんなに無防備で隙だらけな状態で、あいつと何処へ行くつもりだった？



本当に余裕がないな…



みおの表情と態度を見れば、彼女が俺をどう思っているかなんてわかるのに。



君の気持ちを言葉にしてほしい。
もっと君が俺でいっぱいになるカオを見たい。



そんな欲求を悟られたくなくて、俺は必死で余裕なふりをしてる。



「どうぞ」



玄関の扉を開けて中へ促すと、みおは一瞬ためらいを見せた。



「どうした？ やっぱり帰る？」



わざと聞いて彼女の反応を確かめたら、うつむいて首を横に振るみお。
耳まで赤い。



『帰らない。一緒にいたい』



あぁ、たまらないな。
早く抱きしめたい。



いやだめだ、部屋に入ってすぐなんて。
落ち着け。






みおの手を引いてリビングへ通すと



『わ…甘い香り。アロマ？』



「そう、良い香りでしょ。そこのソファに座ってて」



『…はい』



みおはソファに座り、目を閉じて香りを確かめてる。



だからさ、無防備なんだって、それ。
少しは自覚してよ。



「ねぇみお、さっきどうしてあいつと一緒にいたの？」



やっぱ聞かずにいられない。



『あいつ…あ、豊田さん』



「豊田って言うんだ。あいつ、みおが好きな本田選手に似てるよな」



『そうだね。さっき二次会でモノマネしてくれた。面白かった』



思い出してクスクス笑うみお。
俺はおもしろくない。
全っ然。
俺だって本田選手のモノマネできるし。



「ふーん…で、質問の答えは？」



『え？ あ、帰ろうとしたら呼び止められて、これからもう少し飲もうって…』



「2人で？」



『…うん』



「ふーん…」



俺は上着をキッチンカウンターの椅子に掛けて、ゆっくりとみおが座るソファへ向かった。



彼女は俺の空気を察したのか、俺を見つめたまま動かない。
動けないと言ったほうが正しいかもな。



まさにオオカミに狙われた、無防備で隙だらけな子羊のように。

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