君と 3

ヤキモチ ページ36

西島君て、とても人気があるんだ。
あんな風に女の子から誘われること、たくさんあるのかな。



ファンが多いのは、西島君にとって良い事だよ。



でも…嫌だな。
他の子に、西島君に触れてほしくない。
彼をひとり占めしたい。



好きだって自覚した途端にこんなヤキモチ。
こんな私、すごく嫌。



西島君には先に帰るってラインしよう。



もうこれ以上、彼が他の子と一緒にいるのは見たくない。
それにもしかしたら、さっき誘われた子と、これから一緒に過ごすことになったかもしれないし…



ズキン、ズキンって胸が痛い。
苦しい。



いつの間に、こんなに好きになってたんだろう。



西島君のこと。



もう、だから好きになりたくなかった。
好きになったら、恋に堕ちたら、苦しくなるってわかってたのに。





目の前に停車したタクシーに乗ろうとしたら



『みおちゃん！ 待って』



「豊田さん？」



『もう帰るの？』



「はい、今日は楽しかったです。ありがとうございました」



『俺の方こそ。…あの良かったら、これから2人で飲まない？』



え…これから？



『みおちゃんともっと飲みたいなと思って。だめかな』



それはちょっと…



「あの、ごめ…」



『悪いけど、俺が先約』







え？



隣には西島君がいて、彼に肩を抱かれ引き寄せられた。



私の肩に置かれた西島君の手に力が入ると、私の胸も疼く。



好き。



大好き。



胸が苦しくて、痛くなるくらい、あなたが好き。



『みお？どうした…』



「え？」



『涙』



言われて気づいた。
涙が溢れていたことに。



西島君はそっと私の涙を拭い、優しく微笑んでくれた。
それが余計に私の涙を溢れさせる。



『みお、乗って』



言われるがままタクシーに乗り込むと、隣に座った彼が私の手を握った。



たったそれだけのことに、私の胸が再び疼いて、涙はさらに溢れる。



『みお、ごめん、やっぱ送れない』



………そっか。



さっきの子と一緒に過ごすことになったのかな…
それを伝えるために、来てくれただけなんだ。



「ん、わかった」



うつむいたまま返事をして、彼がタクシーから降りるのを待った。




「西島君…？ 降りないの？」



『みお、違うよ。そうじゃなくて…』



違う？



『まだ、帰したくない。俺の家に連れて行ってもいい？』

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