癒やされてる(side N) ページ15
「みお、そろそろ帰ろ」
宇野に話をさせるのは危険だ。
何をバラされるかわからない。
これ以上俺のかっこ悪い話をされたら、たまったもんじゃない。
「マンションまで送る」
通用口を出てタクシーに乗り込む前にみおにそういったら
『大丈夫、ここからそんなに遠くないから』
「いや、でももう遅いし心配だから」
いつもは俺が強引に言えば、彼女は俺がしたいようにさせてくれる。
でも、今日は違った。
『いいの。今夜は1人で帰らせて』
みおは俺の目を見て、はっきりそう言った。
「…そっか、…わかった。家着いたら連絡して」
『うん、連絡する。西島君、今日は会いに来てくれてありがとう。また、木曜日にね。おやすみなさい』
「ん、俺もありがと。おやすみ」
彼女を乗せたタクシーを見送ると、俺たちのやり取りを後ろで見ていた日高が言った。
『彼女に1人で考える時間をあげた方がいいんじゃない? 今夜だけじゃなくてさ』
「俺もそうしようとさっきは思ったんだけど、だめだ。一緒にいたら余裕なくなる…」
『ニッシーは突っ走るからねー。橘さんのこと、大事なら彼女のペースに合わせてあげないと』
宇野も同意見か。
『彼女が俺たちの仕事をどれだけ知ってるかわからないけど、芸能人と付き合うって、簡単には決断できないと思うよ。あの子、真面目そうだし。いくら西島と同級生でも躊躇して当然だろ』
「俺はそんな心配、必要ないと思ってるのにな」
芸能人だからとか、そういうことを理由に断られるのって、キツい。
俺自身を見てほしい。
『 “好き” だけじゃどうにもならないことがあるって、ニッシーだってわかるでしょ?』
そう言って寂しそうな表情を見せた宇野。
わかってるよ、“好き” って想いだけで突き進むことができた頃と、今は置かれてる立場や状況が違うってこと。
「俺はただ、みおと一緒にいたい。一緒にいる時間が好きなんだ。自然と歌を口ずさんで、純粋に音楽を楽しめるあの時間が。
仕事や創作活動は面白いし好きだけど、苦悩も多いだろ? 何にも縛られずに音楽を楽しむって、俺にとっては貴重なんだ。
みおといると、それができて心地良い。うまく言えないけど」
『癒やし、だな』
日高の言葉に、そうだ、俺はみおに癒やされてるんだと気付き、さらに愛おしさが募った。
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さら(プロフ) - 恋葉さん» コメントをありがとうございます。完全自己満な作品に感想をもらえて嬉しいです。その曲知らなかったので聴いてみました。いかようにも解釈できる、想像膨らむ歌詞ですね。好きなシーンを伝えてもらえて最高にハッピーです。読んでくれて感謝です。 (2020年4月24日 3時) (レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
恋葉 - 楽しませていただいております!!!個人的には7ページのチョコレートの話、Da-iCEのチョコレートシンパシーに似ててすっごい好きです(*´∇`*) (2020年4月23日 19時) (レス) id: 35a567dc92 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - てんさん» コメントをありがとうございます。楽しみにしてもらえるって嬉しいですね。これからもニッシーの恋の行方を見守って下さい。 (2019年5月9日 1時) (レス) id: 012c2a9612 (このIDを非表示/違反報告)
てん - いつも楽しみにしてます!この物語のにっしーが好きすぎます(*´ω`*) (2019年5月8日 11時) (レス) id: 3758975c70 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - 憂さん» コメントをありがとうございます。とっても励みになります。楽しんでもらえてよかったです。 (2019年4月25日 3時) (レス) id: 012c2a9612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さら | 作成日時:2019年4月17日 4時