君と 3

恋煩い(side N) ページ14

『橘さん、ニッシーと最近ケンカしてました？』



!?



おいっ宇野、余計なことしゃべるなよっ。



「みお、答えなくていいよ」



『ニッシーは黙っててよ、橘さんに聞いてるの』



『…はい、この前ケンカして、さっき仲直りしました』



みお、真面目に答えなくていいから。
あーもう、みおをここへ連れて来たのが間違いだ。
1時間前の自分の選択を呪いたい。



『よかった〜仲直りできて。うちのメインボーカルが恋煩いで歌えなくなったらどうしようかと思って心配だったの』



『恋煩い？』



『そ、橘さんとのケンカがかなりこたえてたみたいで。普段から根暗だけど、ここ数日はさらに真っ暗で』



頭を抱えたくなった。
これ以上聞きたくない。
日高と宇野にみおとの事を相談した俺が馬鹿だった。



もう宇野を止めるのは諦めよう。



俺は壁際に座ってみおを見つめた。
みおは話を聞いてどんな反応するのかな…



『でね、ニッシーが橘さんに会いたい会いたいってうるさくて。ほんっと女々しいよね。普段仕事人間なのに、うわの空なんだもん。もう恋煩いそのもの。しっかりしてよって感じ』



宇野…言ったな。



みおは胸に左手を当てて宇野の話を聞いてる。
胸元で服をギュッと掴んで、不安げで戸惑ってる顔だ。



『すみません…私のせいで。ずっと、連絡無視してて…』



ほら、彼女は自分を責める。



「みお、みおは悪くない。俺が悪い」



『そうそう、ニッシーが悪い。私が橘さんの立場だったら1ヶ月は無視してた。ほんと、嫉妬して八つ当たりとか最っ低』



ひどい言われようだ。
事実だから何も言えないけど。



『普段仕事と音楽の事しか考えてないニッシーが、何にも手につかなくなるなんて滅多に無いよ。それ位、橘さんに夢中みたいだよ。ね、ニッシー？』



宇野、もうやめてくれ。
恥ずかしいわ。



口元を抑えてみおを見れば、お互いの視線が絡む。



「ん、夢中だよ。みおに」



まっすぐ、彼女を見つめた。



すると、ゆらゆらと揺らぐ彼女の瞳。
真っ赤に染まっていく頬。



その頬を隠すように右手で覆う仕草がかわいくて、俺のS心を刺激する。



『あれは、かわいいな。お前の気持ちわかる』



いつの間にか俺の隣に座っていた日高。
ニヤニヤしてるし。



「おい、日高。見るな、目を閉じろ」



俺は日高の目元を手で覆った。

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