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「私について、どれくらいわかった?」
ふくろうが、今日の天気を聞くように、乱歩に問いかけた。
乱歩はしばらく、閉じた瞳でふくろうを見つめてから口を開いた。
「……君の異能力のこと。君のこと。君が僕にして欲しいこと。君が待ってる人のこと。……たぶん、ほとんど全部」
「さすがは名探偵だね」
ふくろうは、嬉しそうにほほ笑んだ。
対照的に、乱歩はそれを見てわずかに顔をしかめた。
「でも、情報が足りない」
カップを持って、ふくろうは当然だというように頷いた。
「だろうね。私には、まだ誰にも云ったことのない話があるから」
隠すこともせずに、ふくろうはそれを認めた。
「教えて」
「いいよ」
即答だった。
翡翠の瞳が見開かれ、ふくろうを射抜く。
その瞳を静かに受けながら、勿体ぶるように紅茶を一口飲み、ゆっくりとテーブルに戻す。
背もたれに体重を預けながら、揺れる茶色い水面を見つめ、口を開いた。
「もう、13年も前の話になる」
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2021年4月24日 1時