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ページ11

「成功だ」

私の記憶の始まりはその言葉だった。

そして、見た光景は、大喜びする人々の姿。

そんなに多くない。10人かそこらの人たちだった。

一体何が起きたのか。

私は、自分の姿を確認した。

手を見つめ、開き、閉じる。うん、ちゃんと動く。

次に格好。自室にいた時の姿のまま。ラフなパーカーの下に、暖房で暑いからと寒い季節なのに、半袖のお気に入りのTシャツで、下はスキニーパンツ。靴下を履いた足には、当然の如く靴はない。

そして、状況を確認。

私は、自室で宿題をしていた。証拠に私の左手には、シャーペンが握られたままになっている。だが、真面目にやっていたわけじゃない。スマホで動画を流しながら、半分やる気なく、半分寝かけて、ゆっくり、本当にゆっくりと問題を解いていた。

やっていたのは数学。ぼんやりした頭だったし、寝かけていたからこれは夢かもしれない。

そういう結論に至り、私は左手のシャーペンの先で右手の甲を刺してみる。

夢なら痛くないだろうし、運が良ければ飛び起きるかもしれない。

けれど、右手の甲は痛み、目の前の光景や、聞こえてくる意味不明な言葉も変わらない。

「この頁は、一体どれほどのことができるんだ?」

「違う世界から人を呼ぶことさえできた」

「この本の制約さえ守れば、なんでも実現可能なのか?」

「では、無からも人を生み出せるのではないか?」

顔を上げ、周囲を見渡す。

スーツ、白衣、着物。格好に統一性はないが、スーツと白衣が多い。

部屋はすべてが白く、正面奥の壁にはめ込むようにガラス窓があり、その先にも数人いるのが見えた。

アニメや漫画で見る研究施設や実験施設、あるいは取調室のような印象を持った。

何が起きたのか。

もう一度、己に問う。

どうしてここにいるのか。これが夢ではないとしたらなんなのか。

ぼんやりと霞がかる頭はついに思考を放棄し、部屋に支配されたかのように、私の頭は真っ白になり、そして、暗闇に包まれた。

次に目が覚めた時、私は、白い部屋であったこと以外、考えたこと以外、全てを忘れていた。

私の名前も、私が持っていたという筆記用具の使い方も。

私がどこからきて、どうしてここにいるのか。

黒いスーツの男が教えてくれた。

私は異世界から来て、実験のために呼び出された。
白い部屋で思った感情が、男の言葉の信憑性を高める。

あの部屋での記憶は、私にとっては違和感のあるものだった。

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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/  
作成日時:2021年4月24日 1時

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